幼い息子に多額の保険金をかけ首吊りに追い込んだ異常な夫婦。怪しんだ保険会社の営業マンの地獄が始まる。
邦画はガチ!ということで有名だけど観てないもの鑑賞。何とも不気味で絶妙な不快感の耐えない逸品。保険金目当ての自傷を繰り返す問題の夫婦が、保険会社の冴えない営業マンに粘着し、更には契約を妨げる者を容赦無く手にかけていくリアル・サイコ・サスペンス。この重要な「黒い家」の夫婦を演じる西村雅彦、大竹しのぶの怪演が全てと言ってもいい。夫のちょっと足りない多動の所作や辿々しい話し口調、耳障りな甲高い声。妻の壊れたおもちゃのような平坦な話ぶりと張り付いたような笑顔、些細だけど異様な共感性の欠如。本能的に「ヤバイ」「関わりたくない」と拒絶したくなるような人々……色んな種類の怖さが襲いかかる。演出の方も特徴的。画面いっぱい緑色で染まったり、夫のぎこちない動きに軋むような効果音がついたり。ストーリーもサスペンス軸にスリリング要素たっぷりでワクワク。何の変哲もない小学生の作文から滲み出す本当にヤバいサイコパスの片鱗を分析したときはゾワっとした。終盤の怒涛の展開なんかもはやホラー。グロ描写も地味すぎず派手すぎず、どちらかといえば精神を犯してくる系。社会性も常識性も落っことした人間のマジで何するか分からない理解不能さに不安が止まらない。保険屋だけはなりたくないな、と思った。