勝手に映画版金田一耕助フェア。今日は初めて知った『女王蜂』、まだ見たこと無いものがあったなんてワクワク。今回も名家の娘を取り巻く連続殺人事件の始まり、相変わらず圧倒的人物相関の複雑さに苦労する(私が)。オープニングで二人死ぬスピーディーさもさることながら、豪快に人が殺されていくのが金田一らしい。
やっぱりお家争いは随分絡んでたけど、今回は個人の完全な私情が事態を大きく動かしてたのが印象的。いつもの怨念や儀式なんかのファンタジー(?)要素は少なめで、密室や怪文書などサスペンス味が一層濃かった回。市川崑のやつばかり観てるからだろうけど変わらない演出もあれば初めて見る映像技術もあったりなんかして。回想殺人シーンの白飛びしたモノクロ加工は変わらないけど、人物がコマ割りで順に映ってくのは初めて見た。でも走るシーンの情熱的なドラム音は無く、メロウなジャズが流れてた。坂口良子に大滝秀治、恒例のキャスト被りもあってもはや劇団として成り立ってる感。警部とは毎回初対面になってるから別の世界線なのだろう。昭和の立派な舞台を堪能出来るのも醍醐味、デカすぎるお屋敷に感嘆するばかり。
安定と信頼のバッドエンドも良いし、誰も救われないオチに無実の遺族が一人ぼっちで残される結末も素敵だ。智子よ、銀三のために泣くことはない。そんなグロテスクな事件に見合わない探偵のゆるゆるさもやっぱりクセになる。何故いつも情けない顔をしているのか?今回はやや危ない目に遭って、後半は片足をヒョコヒョコさせながらえげつない現場に向かってたのが面白い。それが人の懐に入る人柄というものか。次はどの金田一にしようかしら。
2020-09-02