映画版金田一耕助シリーズ『犬神家の一族』『獄門島』を擦り倒した割にこれは観ていなかったので鑑賞。今回も横溝正史節全開の人物相関の複雑さ。紙とペンを用意して一生懸命メモりながらやっと追いつけた。急に名前出されたら急いで相関図確認する的な。これ暗記する金田一凄いなと思ったら金田一もメモしてた。
金田一はやはり石坂浩二派。探偵特有のスカした感じも突飛な行動も無く、低姿勢で穏やかで大体困った顔してる庶民的なとこが良い。の割に事件はむごたらしくて三人以上は死なないと犯人分からないおどろおどろしさね。手毬歌とはいうものの物語は20年前に起こった殺人事件を軸に展開する。戦後、村に突然現れ村人から金を騙し取った詐欺師を恨んで青年が殴り込むが、返り討ちにあって殺されてしまう。詐欺師は姿をくらまし、残された妻と娘は遠方へ逃げた。青年の遺族、詐欺師の遺族、そして憎み合う二つの名家と婿争い……閉ざされた村での泥沼も泥沼な醜い因縁の中、ある共通点を持った娘たちが一人また一人と残酷な手段で殺されていく。村の宿に滞在していた金田一は、20年前に殺された被害者と加害者から全てを洗い直す……。
次々人物が登場するのと、次々解明される新事実で相関がコロコロ変わるのとで混乱しかけるが楽しいには変わりない。こんな時代もあったんだなあ。何より雰囲気、今の映画では味わえない昭和の醸す雰囲気。セット感皆無で古い宿はマジで古いし立派な屋敷はマジで立派。襖は重そうで柱は黒い。映像がやや暗く、回想でパッパッと明るすぎるモノクロに明滅するのも不気味で良い。神戸の街並みもヒィヒィ言うほどロマンが詰まっている。平成生まれがこうなんだから親世代はもっと刺さるのだろう。
時に死体の描写など人形感丸わかりである意味滑稽に映るかもしれないが、そこからの鬱展開への転落が良いのだから文句なし。結末なんか残された人物の境遇を思うと絶望どころじゃなくて酷い。この、ゆるい探偵とおぞましい事件と鬱エンドの振り幅がやめられない止まらない。村は地元の鬼首(おにこうべ)が由来でだいぶ嬉しい。スキー場があるよ。
【追記】その後古谷一行版とついでに長谷川博己版も観てみたけど、結末というかラストの演出はこれが抜群に良かった。そしていかに石坂金田一が穏やかで上品かを知る。天使コンセプトだってよ。というか割と作品により結構ストーリー変わるのね。これは原作も読む必要が出てきた。
【追記2】原作も読んだ。超面白い。家に金田一8冊になった。もうちょっと買う。
2020-08-30