残忍な非行少年が嵌められて刑務所へ。そこで政府の悪人矯正実験の被験体となるが、暴力と引き換えに倫理が崩壊していく。
怖くて観れなかったが勇気を出して鑑賞。鑑賞中、理由の分からない涙が出て吐き気を催しエンドロールで頭を抱えた。もう観たくないけど好き。 上のあらすじでさっくりまとめたがそれよりも濃厚で憂鬱な内容。キューブリック作品多くは観ていないが「芸術的」という印象は例に漏れず、この映画の世界観もアートそのもの。屋内のセットは家具も壁紙も建築そのものもこの世界のために緻密に作られたのだろうかという徹底っぷり。衣装もまた然り。オープニングのインパクトからずっと目が離せない。「俺がいた」という一言目から始まる主人公のモノローグの言い回しも全編暗唱したいほど頭に残る。脚本家も確認したくなっちゃう。字幕でアンダーラインなんて初めて見たけどこの世界における造語に振られている?終始聞いたことのない造語が乱舞していたがニュアンスで汲み取ってみる。見たことない演出もたくさん、殴打に合わせて油絵が画面いっぱいに広がったり楽器が鳴ったり。また音楽も凄かった。いかなるシーンも上品な音楽で、クラシックも鳴りっぱなし。これが後にまじでキツくて主人公と一緒に気が狂いそうになる。 前半はクライム要素が強めだったが主人公が逮捕されてから全てが変わっていく。実験によって道徳心を得るのではなく、非道徳な行為そのものをトラウマにされる。拳を振るったり女性の裸体に触れる度に生理的拒絶を引き起こし吐き気が止まらなくなる。そうして暴力から隔絶された状態で、かつての彼の被害者達が残酷な報復を始める。強制真人間で抵抗も出来ず一方的に身も心もズタボロにされながらえづき続ける主人公、家族や手下などあてにしていた存在も潰れ、反社や政府は彼を利用しようとすり寄ってくる。そして主人公は再び狂気に堕ちていく。もう救いはどこにも無いのか、不意に訪れたエンディングに、頼むからここで終わらないでと絶望の淵に立たされた。 露骨なグロ描写は無いのに終盤はずっと胃がむかついて不安で落ち着かない。タイトル要素は本当に分からん。これは一回観た感想だけど、次観たらまた違う感想になりそう。もう観たくないけど。