第三次世界大戦後のネオ東京、混乱のさなか幼馴染みが異能を手に入れ暴走する。健康優良不良少年はバイクを飛ばして救いに行く。
死ぬ前に劇場で観れたので我が生涯に一片の悔い無し。4Kリマスター版記念で公開、何とIMAXで!コロナでそっちは観れなかったが4Kは滑り込みセーフ。人生21年目にしてあんな映画やこんな映画に受けてきた衝撃を全部かっさらわれた。88年?とんでもない映画。 まず映像、緻密に作り込まれたセル画の世界が鮮明な極彩色で視界に飛び込む。冒頭のバイクのチェイスシーンからぶっ飛んだアニメーションに疾走感。架空都市の夜景、崩落する建築物、暴れる群衆、飛び回る一人称視点、一回何かキメてないと出来ないような映像表現……まさしく気が狂いそうな描き込みに圧倒される。 そして大事なストーリー。観たら虚無に陥ると危惧していたけど、それも吹き飛ばすくらいの興奮に熱狂。世界大戦後、人工的に生み出した新たなエネルギー(超能力?)を利用して繁栄を手にしたネオ東京、しかしその費用で国債は爆発寸前、翌年にオリンピックを控え国政は最悪の状態に。(この混沌は現在の日本と重なり精神的にくるものがあったねーー)そんな反乱と犯罪蔓延る街の中で幼馴染みの不良仲間・鉄雄が脱走したエネルギーと接触、異能を覚醒させてしまう。主人公・金田にコンプレックスを抱える鉄雄は増していくパワーの虜になっていくが、やがて自制が効かず都を破壊するほどの暴走に発展。もう面白いとか面白くないとかそんなんじゃない、凄い。一度のシーンに詰め込まれた世界が濃密で実際の上映時間の倍観た感覚。 原作者が丸ごと手がけた稀有なこの作品、キャラクターが誰一人無駄にされず、死に際すら芸術的に描かれる。特に鉄雄闇落ちの描写はかなり丁寧。手にした力に恐怖で発狂、徐々にその可能性を理解して欲望に取り憑かれていく様、原作の希釈とは思えないほど見事。 次に主人公、金田の魅力。目の前で人が殺されても化け物相手に武器が死んでも友達が異形の肉塊になっても芯がブレず、ユーモアも捨てず、ただ「救う」信念一本を貫き生身で立ち向かう。これは長くなるやつだから割愛。 もう一つ、音楽!バイクのシーンに始まり、音楽が良い。近未来的なものからラッセラまで絶妙な音響に鳥肌もの。子供達のカラン♪コロン♪なんか耳から離れないやつ。逆に”音抜き”も秀逸。音楽そして環境音がピタッと止まり完全な無音になる瞬間、心臓も止まりそうになる。一度では足りない、また観なければ。この時代にリアルタイムで鑑賞出来た世代、羨ましいの一言に尽きる。