悪魔と夜ふかし

Late Night with the Devil

深夜のトークショーMCを務める男は妻を失い人気も低迷の落ち目を迎える中、起死回生の一手として悪魔憑きの少女を生放送に招待する。

悪魔と夜ふかし

Late Night with the Devil

話題だったけど例によってフォーラムでしか上映しない系で見逃したやつ、GEOでレンタルしてたので借りて観る。13日の金曜日だし。

雰囲気が良い、70年代真っ盛りのニューヨークを舞台に深夜のトークショー番組のMCを務める男が主人公。実力で人気を獲得し大手テレビ局とも契約、順風満帆と思われたが競合の名物MCをなかなか越えられず、苦戦する中で最愛の妻に病気で先立たれる。
失意に暮れ一年ほど姿をくらました主人公だったが、再び番組の舞台へ舞い戻り挽回を目指す。そして視聴率計測週(そういうのがあるらしい)に起死回生の一手としてオカルト特集を行うこととした。
ゲストには霊聴力の持ち主であるという男、懐疑主義で全ての霊現象をインチキと言い張る『トリック』みたいな男、そして目玉として悪魔憑きの少女とそれを研究する博士を呼んでいる。トリック男の野次を受けながらそれぞれの能力を披露させ、そして案の定惨劇が巻き起こる。

形式としては「残された手記」で、モックメンタリーである。実際の番組のマスターテープを我々にお見せしようという流れ。マスターテープだからCM中の舞台裏も映っているよ、あの恐ろしい事故(事件)の裏側も見れるよ的なテイだ。
そんな設定だから番組のオープニングからずっとショーを見せられるわけだけど、日本人的には別に面白くないジョークで構成されるトークバラエティなので、不穏になるまではちょっとつまらない。それは仕方ない。

全体的にこの時代への愛とリスペクトを感じる演出の数々。もちろん画角はアナログテレビのあの正方形っぽい画角で、画質もDVDというのもあってガサガサだ。舞台裏の映像に切り替わる時は白黒になるしね。

それにしても、流れ的にMC男が過去にとんでもないことをやらかしてしまったに違いない……とワクワクしていただけに、真相のインパクトがちょっと弱くて若干拍子抜け感はあった。
悪魔憑いた少女が意味深にMC男に話しかけたり、妻の声で「どうしてあんなことをしたの……」なんて言ったりしてたもんですから。MC男がきな臭い紳士クラブに熱を上げていたことは分かっていたから、番組の成功・名声の獲得のために妻を生贄(物理)にしたとか、もしくは妻の病気を治したくてえげつない儀式を行ったとか……とにかく妻を使って非人道的な外道カルトに手を出したんだろうとドキドキしていたもんだから。実のところは随分健康的であっさりしていた。病に苦しむ妻に懇願されて、ナイフで一突きと。これが主人公の罪悪感補正で暗喩マシマシ表現ならもう分からんけど。

ゾッとした最大瞬間風速は一人目のゲストの霊聴力男が放送中に血を吐いて搬送され、とりあえず番組を進行していたら次のCM中にプロデューサーからその男が死んだと報告されたときかなあ。あれが結局リアルで一番背筋凍りますよね。生放送中に吐血したゲストがその後死亡って。確実に映像は検索してはいけない言葉入りするだろう。「ナイトオウル 大噴射」みたいな。ナイトオウルは番組名ね。

あくまで生放送中の映像という形で進むから、現場の空気感とかMCが取り繕う感じとかの生々しさから出る緊張感は良かった。

そうそう、年代へのリスペクトについて、特撮が素敵だった。現代的なぬるぬるCGなど使わない、悪魔はもろに『エクソシスト』顔だったし、映り込んだ亡霊は『スターウォーズ』のジェダイみたいにベタベタな合成だったけど、それも雰囲気を死守するためだろう。
何か映っていたからテープを巻きどして……ゆっくりコマ送りして、という流れだったから、エクソシスト張りのサブリミナル悪魔を期待して心臓バクバクしながら見てたので、発光する合成亡霊にめちゃめちゃ大笑いしてしまった。真剣なシーンなんだけど。

トリック男が集団催眠でサブMCの腹と頭からミミズを噴き出させるシーンも凄まじい技術だった。『ザ・フライ』レベルのアナログぐちゃぐちゃ変態技術だ。こういう技術がまだ残っているとちょっと嬉しくなる。マジでミミズ噴出なのか、とビビり始めたあたりでトリック男が「目覚めよ」と合図して我々は正気に戻る。もちろんサブMCの体はなんともない。視聴者も巻き込むこの集団催眠はシンプルに「す、すげー!」と興奮したけども。

小ネタを思い出したけど、このトリック男の紹介でウォーレン夫妻の名前が挙がって嬉しかった。実在したんだよね、死霊館夫婦。トリック男が幽霊屋敷のインチキを暴きに行く調査に誘ったけど断ったって。ワハハ。

このトリック男も最後に少女が本格的に悪魔に乗っ取られて暴れ出した時には跪いて命乞いしてたから皮肉なもんだ。可哀想なのは最初から悪魔憑きに怯えて反対していたサブMCが最初にグリンっと首を捻られて殺されてしまうとこか。これこそ本当に検索してはいけない映像になるだろうな、「ナイトオウル 大回転」とか。
そうして客もスタッフも逃げ出し騒然とするスタジオでゲストを次々殺す悪魔。MC男だけが奇怪な回想に取り残されてしまうが、最後に妻を刺殺した記憶を再現させられる。
そこで我に帰る、刺した相手は至って正気に戻った悪魔少女で、辺りにはゲストの死体の山。誰もいないスタジオで呆然とした男がただ一人、「目覚めよ……目覚めよ……」と呟いてエンド。

この締め方は好き。男がやっちゃってましたってことならヒトコワ派の自分は嬉しいけど、それにしてはトリック男の死に様はとても人間には出来なさそうだからやっぱり純悪魔パワーなのかな。

これに関しては家のテレビで観て正解だった気もする。回想に閉じ込められた男がこっちに向かって「テレビを消せ……」と訴えてきた時は不気味だった。映画館じゃ消せないっすよ……と返事してた。それにしても最後までカメラを回した異常肝座りカメラマンがいたことになるけど、その辺はどうなっているんだろう。気にしたら野暮か。
砂嵐が歪んで悪魔の顔が浮かび上がったのはすごくテンション上がったなあ。

オカルトホラー派閥には受けそうな映画だった。
2026-02-13