ボーイ・キルズ・ワールド 爆拳壊界流転掌列伝

Boy Kills World

女帝ヒルダの独裁下にて家族を奪われ、拷問で聾唖となった主人公が復讐のため殺し屋の腕を磨く。たった二名の反乱軍と共に女帝暗殺に乗り出す。

ボーイ・キルズ・ワールド 爆拳壊界流転掌列伝

Boy Kills World

むしゃくしゃしてたら公開してたのでレイトショーにて鑑賞。観て良かった、楽しかった。好き好き。
70年代カンフー映画みたいな邦題サブタイトルも好みだ。

宣伝でサム・ライミの名前があったけど監督じゃなくてプロデューサーだったようだ。監督は知らぬ人だった。予告からバイオレンス色強そうだったけど、R15でちゃんと痛そうで良かった。

ビル・スカルスガルドが主役なのは知ってたけど、他のメンツの顔ぶれも豪華でテンション上がった。まず師匠役は例のインドネシアのガチ強おじさん。『ザ・レイド』であまりにも強すぎたあのおじさんね、『ジョン・ウィック』にも出てたしね。
ほいで悪玉のヒルダはよく見たら『X-MEN』のジーンだった。懐かしい。反乱軍の生き残り労働者おじさんは見ているうちに「なんかすっごい見たことあるなぁ〜〜」と思いながら一生懸命考えてたら思い出した、『ブレット・トレイン』の日本人お父さんだ。アンドリュー小路。久しぶりだなぁ〜。

久々に顔が爆イケのアクション主演でビジュアル的にも大はしゃぎだった。ビル・スカルスガルド、『ジョン・ウィック4』の時も常にスーツスタイルでイケてたけど、今回は顔のドアップが多くて嬉しい。身長高い。筋肉凄い。喋らない。耳も聞こえない。
覆面の女兵士6月27日(名前)も腹筋バキバキでカッコ良かったが、後半で顔出ししたにも関わらず戦う時は毎回ヘルメットを被り直すので、戦闘シーンはスタントマンが担当しているんだろう。だがしかしビル・スカルスガルドはずっと顔丸出しでガンガン戦って体張っていた。こんなに戦えるなら『ジョン・ウィック』の時もちょっと参戦してくれたらば良かったのに。主旨ブレるか。カッコ良かったなあ。

そんなビル・スカルスガルドの設定は少年時代に反乱分子と見なされて拷問を受け聾唖となっている。磔にされていたところを親の友人であったインドネシアおじさんに助け出され、復讐のため暗殺者としてのスキルを叩き込まれる。
ある日復讐のチャンスが訪れ、襲撃した工場の労働者に紛れていた反乱軍の男の協力を得る。反乱軍といえど残っているメンバーはたった二人。計三人で城に潜入し、ヒルダとその幹部どもの暗殺作戦を開始する。

聾唖って差別用語になるのかな。横溝正史や江戸川乱歩で染みついた語彙は時々危ないので迂闊に外で使えない。
それはさておき、今回の主人公は今までに見た聾唖キャラでダントツ好きだった。ビジュアルはもちろんだけど、悲惨なトラウマと過酷な環境と聾唖の障害を抱えている割には常に妙な余裕があって、どこか呑気なあたりがかわいい。
話せないけど頭の中ではだいぶ喋ってて、それがモノローグで流れてるんだけど「心の声は子供の頃に遊んだゲームのナレーションの声にしてる、かっこいいから」とのことでビル・スカルスガルドご本人のものではない。渋くていい声。地味にシュールな設定で好き、ゲームはモータルコンバットだったかな。
そんで耳も聞こえないから基本は読唇術で読み取るんだけど、普通に全然読めない時がある。まあ難しいと思うわ、独学だろうし。具体的なワード忘れたからイメージだけど、作戦会議中にジッと仲間の口元を見て「犬を飛び立たせる……」「コーンスープで二、三人倒す……」的な絶対違うであろうワードしか読み取れず、とりあえず分かった感じで神妙に頷く主人公。楽しい。

往々にして障害持ちキャラを出す映画、特にアクション映画においてその障害を特性として活かしてる感ってあんまり無いんだけど(別にこの障害設定あっても無くても変わらなくない? 的な)、こんな風に心の声の設定とか読唇術の苦戦とかでキャラを表現するのはかなり印象的だった。口の聞けなくなった主人公がただの寡黙な男にしか見えなく感じる『サイレント・ナイト』はこの辺気合い入れて欲しかった。
でもこのビル・スカルスガルド、手話使わない。確かに後天的な障害だし山奥でインドネシアおじさんに育てられたし手話習得のハードルは絶望的だろうけど、手話なしでよく頑張ってきたよ。油断するとふとした瞬間に主人公の境遇を思って泣きそうになる。多分母性。
6月27日は覆面そのものに電子掲示板みたいにワードが流れるから、一番自然に主人公とやりとり出来てて妙に面白い。
あとは小さい頃から見えているイマジナリー妹(両親と共に処刑されてしまった)とは当たり前だけど会話できる。主人公はムキムキ男に成長したけどイマジナリー妹は殺された当時の子供姿のままだから寂しくてこれも泣けてしまう。心の中ではちゃんと生き続けていて小さい頃と同じように仲良く会話してるのも泣ける。こういうの弱い。

だがしかし!! 終盤、丸ごとまんまひっくり返る展開も待っている。以下ネタバレ。
なんと主人公の記憶は丸々インドネシアおじさんに洗脳されたものだった。処刑されたのはインドネシアおじさんの家族、処刑したのはヒルダの息子。それが主人公。妹は元気に生きて覆面の戦士となっている。な、何ーー!
6月27日の切羽詰まった感じやヒルダがやけにインドネシアおじさんの処刑に執着している様子から薄々察せるものではあったが、インドネシアおじさんの何かの間違いとかでなく正真正銘おじさんがバッドガイだったのは驚いた。いい奴バイアスがかかっていたよ。
おじさんは当時何とか逃げ出して処刑を免れたものの、家族の命を奪ったヒルダを憎み復讐を誓っていた。そこに都合良く一人歩きしている主人公――ヒルダの息子――を見つけ、誘拐して怪しい薬を吸わせながら偽の記憶を刷り込んでいったのだ。そうして一人前の暗殺者に育て上げ、ヒルダ暗殺に向かわせた形。

捕縛されてそれらの衝撃の事実を知らされる主人公。しかしにわかに受け入れられるはずもなく動揺していると、病みヒルダにこいつは息子じゃないと発狂されるが。6月27日にあの幼少時代に二人だけで考えたハンドサインをして見せる。そして兄との再会に確信を持てた妹との共闘スタート! 良いですね。マジで、妹生きてて良かった……嬉しい……。
もちろんラスボスはおじさん。ご存知めちゃくちゃ強いのでラスボス戦も死闘で面白かった。

年齢制限かかってたの後から知ったけど豪快な描写たくさんあって楽しかった。敵を惨殺した後にイイ声で「フェイタリティ……」って心で呟くのはめっちゃはしゃいだ。あと当時のメモで「AKIRAでテンション上がった」って書いてたけどあまり記憶がない。おそらく例の金田ブレーキだとは思う。また観よう。エンドロールもレトロゲーム風で可愛かった。

暗殺作戦もドタバタでシンプルに展開が楽しい。
仲間はやられてしまうが妹が生きてたのでオールOKです。エンドロール後の二人でのどかに飯食ってる映像でオールオールOKです。2025ベスト候補。
2025-09-22