うだつの上がらない孤独な男は強い超能力を秘めていた。目をつけた博士に拾われるが、人間を排しようと企む邪悪な超能力者の男に同族が次々と殺される。
去年観たけど序盤で眠くなって中断したら配信終了してたクローネンバーグ作品、復活してたので一応観る。 雰囲気は好きなんだけど何故眠くなったのか思い出した、主人公が博士に回収されてベッドで目覚めてからの謎の間の長さだ。見学者がゾロゾロやってきてじっと眺めてくるんだけど、眺めの間がま〜〜長い。覇気持ちみたいに人々の心の声が頭の中でガンガンに鳴り、苦しむ主人公が落ち着くまでの間なんだろうけど、これが冗長で早速しんどくなって停めたんだろう。今回はせっかくなので耐えてちゃんと観る。 冗長だったのはそこだけだったみたい。その後の頭パーンは覚えてたから本当にうとうとしてたんだろうな。ちゃんと観たら渋くて味のあるSFスリラーだ。 ジャック・ニコルソンみのある悪役ボスのキャラが登場からイカす。 博士お抱えの能力持ちマンがVIPたちの前でお披露目をすべく、スキャンされたい人を募る。ちなみにスキャンはそのままの意味で、テレパス的な感じで人の頭の中を覗く能力だ。怖気づくVIPたちの中で一人手を挙げる男、この正体が悪役ボス。早速スキャンが開始されるが、何故か激しく苦しみ出す能力マン。直後、その頭がパーン! 一般人のふりをして能力勝ちする悪役ボス。イカす。 頭パーンはド派手だったけど能力は基本テレバスなので全体的に絵は地味っちゃ地味。でもその感じが渋くて好きではある。 拘束されて護送されるボスは思念だけで車を事故らせ人を撃たせ自殺をさせる。主人公も恐るべき成長力で人を吹き飛ばしたり電話越しにコンピュータをハッキングしたりする。これ好き。公衆電話の受話器を耳に当ててじっと集中してシステムの内部に入り込む、かっこいい。相棒も人を火だるまにしたりトラウマの幻覚を見せたり強くて素敵。 悪役ボスとの一騎打ちで再びえげつない美術が炸裂する。腕や顔の血管が膨らみ破れたところからは血が吹き出す。顔に手をやると肉がずるりとこそげ落ちる。手から炎が出たかと思うと 全身が燃え出す。凄いもんだ。そういえば『ザ・フライ』の監督だし、この辺の美術は気合いが入っている。 そうそう、話としては孤独な主人公が嫌な感じのマダムを無自覚にテレパスで倒れさせたところ、現場を見られ博士に引き取られる。そこで自分がスキャナー(能力者)であることを知らされ、これまでの不可解な現象を理解する。 博士の目的はスキャナーを生物兵器として育成することだったが、ある日博士のスキャナーリストが盗み出され、リストに載っている者が次々殺されていく事件が続いていた。犯人はあの悪役ボスで、そいつは人間を支配しようと企んでいたのだ。妨害となる人間側のスキャナーを抹殺して兵器化を妨害しているという。 そこで博士はまだリストに載っていない、かつポテンシャルの高い主人公に悪役ボスの組織への潜入を依頼する。能力のコントロールを身につけた主人公が潜入に乗り出すと、何やかんやあってまだ存在が認知されていない正義のスキャナーたちと出会う。悪役ボスの組織の猛追を受けつつ真相を探る主人公たち。そして衝撃の真実を知ることとなる。 兵器化に関してはええんか? と思わなくもないけど愛国心の強いメリケンなので光栄なことなのかな。止める人も兵器化についてというより悪役ボスの危険性についての視点からだったし。スキャナーたちは社会に馴染みづらくて自分の存在意義に飢えているって感じの扱いだったからOKなのかな。主人公も博士とか会社のことを「僕を拾ってくれた」って言ってるもんね。 メインメンツの能力が皆最強クラスなので安心感がある。銃を向けられても「能力っ……!」で解決するので楽だ。最後のオチも「おぉ〜」という感じで楽しい。 この時代にしては珍しく、途中から命懸けの相棒になった人が女性なのに恋愛に発展しない。その雰囲気も好きだ。基本そういうテンションでSFスリラー観てないしな。