胸騒ぎ

Gæsterne

バカンスで知り合った夫妻に誘われ、週末を夫妻宅で過ごすことにした主人公家族。が、少しずつ夫妻の違和感に胸騒ぎを覚えていく。

胸騒ぎ

Gæsterne

推しのマカヴォイがリメイク作に出たので、そっちを見る前に元ネタを確認。胸糞映画としてちょいちょい耳にしていたので気にはなっていた。
久しぶりにGEOへ赴きレンタル!

胸糞だしキツすぎて深く考えないモードに切り替える系のやつだった。
デンマークで穏やかに暮らす核家族がバカンス中に出会ったご機嫌な核家族にお呼ばれし、オランダの田舎で週末を過ごすことに。一見善良そうなオランダ家族だったが、一緒に過ごしているうちに妙な違和感が滲み始める。

デンマーク妻がベジタリアンだと伝えていたのにジビエ料理を半ば強引に振る舞ったり、デンマーク娘(九歳)のベッドがオランダ息子(九歳)と相部屋な上に貧相なマットレスだけだったり、ディナーに誘ったかと思えばベビーシッターを呼んで当然のように息子とデンマーク娘を置いて行ったり。
他にもディナーでオランダ夫妻だけ露骨にいちゃついて気まずい雰囲気になったり、会計でしれっとデンマーク夫の奢りにしたり、帰り道(飲酒運転)でMDを爆音で流したり。さらにはデンマーク妻がシャワー中なのに扉一枚向こうでオランダ夫が歯磨き始めたり。しまいには寝付けなかったデンマーク娘をオランダ夫妻(すっぽんぽん状態)がベッドに招いたりなんかして、とうとうデンマーク妻の堪忍袋の緒が切れる。
深夜、オランダ夫妻が寝ている間にデンマーク家族は抜け出した。しかし車中で娘が大事なぬいぐるみが無いことに気がついでぐずり出す。仕方なくUターンして再びオランダ家族の家に戻るが、運悪く起床した夫妻と鉢合わせる。正直に事情を伝えるとオランダ夫妻はショックを受けつつ謝罪し、弁解しつつ当初の予定通りもう一日泊まって行ってほしい、最高の一日にすると願い出る。絆されたデンマーク夫妻はもう一日泊まることに。
お互い腹を割って接することで関係は修復しかけたが、その夜にデンマーク夫はオランダ夫妻の恐ろしい秘密を知ってしまい事態は急転直下の悪夢と化す。

面白い、良いスリラー。オランダ夫妻の絶妙に嫌な感じが生々しい。
スリラーっぽいあからさまな不穏さというよりは、”根は良い人なんだけどデリカシーが無くて微妙に価値観が合わない”ヤな感じ。善意でやってくれてる感じが邪険にしにくいし、こっちが客人である以上不満は言える立場じゃないし、言ったところで「嫌ならその時にそう言って欲しかった」とか返されちゃうとそれはそうなんだけど……っていうあの感じ。かぁ〜。善意の押し付けもハラスメントみたいなもんだ。

自分はもう価値観の違いに関しては、言わなきゃ伝わらないし言って分かり合えるもんでもないと開き直っているので、割とはっきり伝えるようにしている。ノンデリにノンデリで返すってわけじゃないけど、案外堂々と明るくきっぱり言えばそんなに気まずくはならない。後からアレ嫌だったってネチネチ伝えるくらいなら隠し通してバツっと距離置くか、仲良くしたいならその時に言うべきだ。
なので己なら戻って鉢合わせた時、親が危篤で……子供がパニクっちゃったからバタバタで……とかそれっぽい嘘でさっさと帰ってブロックするだろう。まずあんなに価値観合わない時点でもう分かり合える未来は無さそうなので、”絆される”という方向に心が動かない自信がある。優しい姉と自分の大きな違い。隙自語。

と、優柔不断なデンマーク夫妻にヤキモキしつつ観ていたわけだけど。最終日後半あたりからオランダ夫妻の異常性がいよいよ目立ち始める。
国境なき医師団で働いていると言っていたオランダ夫が嘘だと言い出したり(無職だった)、オランダ息子(病気持ちで話せない)のダンスが下手くそだとブチギレてカップを投げ割ったり。
割と無職バレが一番不気味だったかもしれない。普通のトーンで嘘だって言う感じ。大人がナチュラルに医者を自称してた、妻と一緒に。怖すぎる。というか、それなら何で収入を? この時点でこれまで客人から強盗してきたんじゃないかと嫌な想像が巡るよね。

案の定オランダ夫妻の実態は強盗常習犯だったし、なんなら殺人も誘拐も重ねていた。
今まで無数の観光家族を同様の手口で招待し、殺害しては身ぐるみ丸々剥いでいた。何より恐ろしいのは被害者家族の子供の舌を切って口を聞けなくし、自分たちの子供にしていたこと。無論、オランダ息子もその一人。夜中、プールに浮かぶオランダ息子を発見したデンマーク夫は再び家族と共に夜逃げを敢行する。
が、察したオランダ夫婦に捕まりデンマーク家族も犠牲となる。そう、この話で主人公家族は助からない。

なんの罪も無い幼いデンマーク娘が両親の目の前で舌を切られてそのまま攫われていくのはキツすぎて、ここで深く考えるのをストップした。セルフ防衛機制。胸糞映画を観るのに必要なスキル。
だがしかし、娘が舌を切られて連れて行かれたのに、犯人夫妻と車内に残された母親がただ大騒ぎしてジタバタするだけだったのはちょっと納得いかない。後部座席で隣には犯人妻。犯人夫は運転中。で娘の舌を切ったのは犯人妻。自分の娘にあんなことされた直後だったら迷いなく犯人妻の息の根を止めに行くけど、なぜ騒ぐだけだったのか……腕も自由だし拘束されてなかったと思うけど。騒いでる隣でハサミしか持っていない犯人妻がスーンと座っているのは違和感があった。夫がボコボコにされているし戦意は喪失してたってことかなあ、それともまだ助かる気で娘を助けるために抵抗はしなかったのかな。自分が殺される恐怖が勝ったのか。母親になったら分かるだろうか。

結局無抵抗になったデンマーク夫妻は服を脱がされ二人一緒に殺される。最後に口の聞けなくなったデンマーク娘がオランダ夫妻と共に帰宅してエンド。ひどいもんだ。
小さい頃にそんな目に遭ったらショックすぎて逆に考える頭が吹っ飛ぶかもしれない。あのデンマーク娘が次の招待客と共に助かるように願うしかない。

愛しのマカヴォイはどっちの役をやるんだろう、不運なデンマーク夫か異常なオランダ夫か。どっちも合いそうだから普通に分からない。どっちもやって良いよ。

とりあえず最初からオランダ夫妻の誘いに乗り気じゃなかったデンマーク妻がとにかく不憫。
最初の夜逃げでぬいぐるみ諦めて帰っていれば良かったね。ぬいぐるみ、車の中にあったしね。
2025-08-18