バーの三周年記念パーティーで突如オーナーが客を人質に立てこもる。巻き込まれたベテラン刑事がその真の目的を探り出す。
チェン新作映画に向けて一通り観てみる。2010年代のチェンは久々だな。 正直舐めてたけど想像以上に面白く且つバイオレンスな話で良かった。 くたびれきったベテラン刑事のチェンが娘に呼び出され、三周年記念で大盛り上がりなイケイケのバーを訪れる。トガり散らかした娘と再会すると、なんと恋人としてバーのオーナーを紹介される。もちろん猛反対のチェンだったが、ただでさえ娘とは疎遠だったためムードは険悪に。そんな中揉め事の気配を察知したチェンが様子を伺おうとしたところで何者かに殴られ意識を失う。 目覚めると椅子に拘束されており、銃を持って現れたのは何とバーのオーナー。客の人々とチェンを人質に立てこもってしまったのだ。警察に収容中の囚人を連れて来るよう要求するが、オーナーの真の目的は別にあった――。 シチュエーションは基本バーの中で、チェンが自分も捕まりながらも娘と人質たちを助け出そうとするシンプルな構成。緊迫の状況でオーナーの目的をじわじわと理解していくサスペンスもの。 特徴的なのはチェンが一貫して人を殺さない主義なこと。そもそもジャッキー・チェンといえばえげつない格闘はしても基本的に人は殺さないスタイル。 これまで観てきた刑事は大概躊躇なくぶっ放してたけど、このチェンは最後まで絶対に犯人を死なせない。警察の狙撃手が狙おうが、本人が自殺を試みようが必死で止めに行く。偉い。 オーナーの真意としては唯一の家族である妹の死についての真相を知りたいがためだった。薬局で強盗に遭遇し殺されてしまった妹の死の真相を、当時の現場に居合わせた薬剤師、客、そして刑事であるチェンを強制的に集めたということだ。パーティーに招待する形で、チェンは娘を使って呼び出したのだ。 まあジャッキー映画だし真相は誰も悪くないオチではあった。 妹は既に自殺を決意して、薬局には大量の睡眠薬を買いに来ていたところだったのだ。強盗に人質に取られた時に銃を掴んで自分に向けて発砲していた。 「さっさと強盗を撃ち殺していれば良かっただろ!」とオーナーには言われたけど、チェンが強盗相手でも殺さないことは既に十分理解してたろうしな。刑事の信念、かっこいい。 オープニングでいきなりチェンが自分の頭にぶっ放していたので、アル・パチーノのあれ(タイトル出てこない)みたいにチェンが死ぬまでの物語かな? と思ったら全然生き延びた。弾が抜かれていた。冒頭は偽映像ということになるが、ぶっ放しに至るまでにも"もしも"の映像が何度も挟まれていたので、前振りはあった。なるほどねえ。 娘を助けたければ自分の頭を撃て! という流れだったけど、スッと頭に構えたチェンにメソメソしてしまう。父さん……死ななくて良かった……。 オーナーや仲間たちがムエタイ使いで嬉しかった。 少々都合の良い展開はぶっ込まれるけども、最終的に死者は出ないハッピーエンド。家族でちょっと緊張しながら見るのにちょうど良いぞ。