成龍拳

剣・花・煙雨江南

決死の戦いで生き残った青年が婚約者と再会しようとするもすれ違い続ける。敵の女に追い回され、親友に裏切られ、満身創痍で婚約者を探す。

成龍拳

剣・花・煙雨江南

原題めっちゃ美しいな。
思ったより異国情緒溢れるロマンチックな話だった。このテイストの香港映画は初めてでなかなか良い。手塚治虫の『火の鳥』の歴史もの系みたいな。いやめちゃめちゃ格闘はするけども。

顔に傷のある女が率いる蜜蜂党によって壊滅状態となったチェンの一派。最後の力を振り絞って何とか女を追い詰めたチェンだが、トドメの一手を躊躇ってしまう。その隙に女は反撃して逃げ出すも、瀕死のチェンを介抱していく。
目を覚ましたチェンは婚約者の娘のもとへ歩き出す。蜜蜂党の襲撃を予期していたチェンは娘を巻き込むまいと、前日に酷い言葉を投げつけて突き放していたのだ。身籠っている婚約者のことを親友に託していたため、親友の暮らす山へ向かい始めた。

ところが親友の家はもぬけのから。前夜に婚約者が捨てられた辛さに遠くへ連れ出してくれと親友に頼んだためだった。すれ違ってしまったチェンはボロボロになりながらも婚約者を探し歩く。

言ってしまえば親友は実は暗殺家業で土地を支配する流血党の党首であり、とんでもない悪人だった。親友はチェンが死亡したと婚約者に嘘をつき、あまつさえ結婚しようとする。お腹の子供のことを思い婚約者の娘は結婚を承諾するが、心はチェンにあるので塞ぎ込んでしまう。

一方で流血党の一団に襲われ満身創痍のチェンは蜜蜂党の女からその事実を明かされ、婚約者を取り戻すため成龍拳を習得して立ち向かう。
内容書こうと思うと結構複雑。頑張って省いてこんなもん。それこそ火の鳥みのある漂泊の世界観。

すれ違いも切ないが、何より蜜蜂党の女が切ない。初めは殺意だけだったのに、見逃されてからはチェンが忘れられずどこまでも追ってしまう。婚約者の足取りが分からずチェンが打ちひしがれる度に姿を見せては「男のくせに情けない」と笑い、「未練を捨ててしまえ」と詰め寄る。
そんでチェンが流血党に襲われて死にかけると助けに行って、旅団がチェンを介抱すると「その男をよこしなさい」と乗り込む。侍女が「なぜそこまでこの人を?」と尋ねると「そばにいたいの。他の人のところで死なせたくないからよ」……うおぁ〜切ない。ヤマト編のカジカのような、鳳凰編のブチのような。もう火の鳥ばっかりですけども。ちょっと刺さったなあこのキャラは。

それで最後までチェンは婚約者のためだけに顔を焼いて技を磨いて、命がけで助けに行くんだもんなあ。その上で蜜蜂党の女には「あなたから受けた恩は生涯忘れない」って言っちゃうんだもんなあ、いやぁ〜うおお〜好きだ〜〜。手塚描いてくれ〜。

などとロマンチック要素に身悶えしつつ、今回は70年代時代劇にしてはかつて無いほどワイヤーを駆使していてファンタジーな格闘が多かった。
蜜蜂党の戦いっぷりもギリギリ怪異なのか? というような飛びっぷり。それはそれでキョンシーみたいで面白い。
そんで今回のチェンは今までにない精悍で誠実な漢だったので、心なしか吹替えもいつもよりハンサムな感じ。

ハッピーエンドで本当〜にホッとした。たまにはこういうのも良い。
2024-05-20