ご飯のお供に。全く前情報なし、良さげな評価とポスターの可愛さで観てみる。なんとなくポスターがイケてるホラーは内容もイケてることが多い気がする。
想像以上に気持ち悪くて恐ろしい素敵なスリラーだった。好きだけど誰かと一緒には観られなさそうだしオススメもしにくい。そんな気持ち悪さ。
お宿予約サイトのダブルブッキングにより、治安最悪の地域で見知らぬ青年とルームシェアを強いられてしまった主人公。
ソワソワしまくる青年に警戒MAXの主人公だったが、何やかんや良い奴だったので打ち解けていく。
しかし翌日、先に帰った主人公がトイレットペーパーのストックを探して地下室に入ると扉が勝手に閉まり閉じ込められてしまう。出口を探しているうちに秘密扉を発見し、たどり着いた隠し部屋を覗き込んだ主人公は背筋を凍らせる。
この怖さの種類のガチっぷりが良かった。隠し部屋はあからさまなホラーってわけではなく、ただ薄汚れた部屋にビデオカメラと簡素なベッドと汚れたバケツがあるだけ。でもこの光景を目にしたとき主人公と一緒に芯からゾッ……とした。個人的にこういうのが結局一番恐ろしい。
そこからの勢いも良い。
帰ってきた青年により地下室から脱出した主人公が隠し部屋のことを伝え、そのまま宿を出て行こうとするも青年が確認しに行くと言うので彼が戻るまで待つことに。しかしいつまで経っても戻らない青年に心配した主人公は再び地下室に降りて様子を見に行く。
すると何故か青年の姿は忽然と消えており、探し回っていると更に奥へ続く隠し通路を発見する。より深く地下へ続く暗闇の階段であった。
もう〜〜自分はこの時点で踵を返して帰りますけど。暗所・閉所恐怖症はまず無理な状況。恐怖症じゃなくたってあの部屋を見た後なら行きたくないわ。
しかし主人公は帰れない、階段の先から青年の「助けてくれ!」の叫びが聞こえたから。
スマホのライト頼りに半泣きで階段を降り、真っ暗な地下を進む主人公。これはキツい。マジで思ったのは青年、助けだけ求めないで状況を伝えてほしい。襲われたのか、怪我したのか、身動きが取れなくなったのか……それによりこちらの心持ちもだいぶ変わってくるんだから、ただのHELPだけは本当にやめて欲しい。
とりあえず地下には頭がおかしくなって侵入者を見境なく育てようとしてくる子育て狂の全裸老婆が潜んでいたわけだけど。
いやあ気持ち悪かった。毛がついた不潔な哺乳瓶も強制授乳も見れたもんじゃない、不快指数高めのホラーだけどキレは良かったと思う。
一番の目玉はその子育て老婆だけど、元凶である老婆の父もなかなか。
不意に過去の映像に切り替わって、痩せぎすのおじさんがスーパーで「ベビー用品の場所は……?」「こちらですよ、お産は〇〇病院で?」「いえ、自宅出産で……」「あら、他に必要な物はお医者さんから何か聞いてる?」「いえ、私だけなので……」
この会話からの車の中から遠目に若い女性を眺めるおじさん……この時点で「ま、まさか……」と察させる演出は素敵だった。怖〜……。
『ドント・ブリ◯ズ』もだけど、この手の怖さが段違いに恐ろしく感じるのは自分が女側だからだろうか。死ぬまでに味わいたくない仕打ちだけど、1%でも起こらないとは言い切れないし、実際に被害に遭った人が何人もいると思うと堪らない。
潔癖ってほどではないけど不潔が何より恐ろしいので、不潔な被害に遭いにくい点で男側が羨ましい。男が夜道に座り込んでいる横を通るとき、暴力や引ったくりより飛び抜けて恐ろしいことを警戒する緊張を、男ならそれほど感じずに通り過ぎることが出来るんでしょう。いいなあ。
なんて胸を痛めつつ、後半戦は何も知らない宿の持ち主が身辺整理のため訪れる。
放置された二人分の荷物に空き巣を疑いつつ、開いていた地下室の隠し通路に持ち主も気が付く。所有面積に含むことが出来る、と嬉々として面積を測り始めた持ち主だったが、そこで例の老婆に襲われる。逃げ回っているところに鉢合わせたのは、なんとか生き延びていた主人公だった。
後半戦の持ち主男が徹底的にクズで腹立ってくるけど、最終的に主人公は生き残るのでハッピーエンドだと思う。
舞台はあのデトロイトなので、一度脱出した主人公の訴えが一切聞き入れられないのはしんどいかった。地下で人が殺されてまだ取り残されている人がいる、という話を全く信じてもらえない。ラリっているか酔っているかと呆れられ、さっさと次の銃撃の現場へ向かってしまう。無慈悲。
そこから取り残された方を助けるため再び進入する主人公の男気は凄まじい。絶対に確実に真っ直ぐに帰る。
スリリングでおぞましくてモンスター味もあるホラー、楽しかった。
青年がまさかのビル・スカルスガルドで思わぬ喜び。序盤のソワソワルームシェアはこちらもソワソワした。ハンサムだわあ。
2024-02-28