歌がうまそうなので観に行く。アリエルの人も出てらっしゃる。でもW主人公というよりは姉がメインだった。
何やら有名なミュージカルの映画化らしい。映画化自体は昔にやったみたいだけど、今回はまたリメイク的な感じとのこと。えっ、昔の方は監督スピルバーグで主演ウーピー・ゴールドバーグ!? うわ〜面白そう〜〜。
それはさておき、なるほどお話は外国文学らしい内容。
時は70年代。妹と仲睦まじく暮らしていた主人公セリーはある日、強制的に村の男と結婚させられる。町外れの家で暴力的な男とその子供たちと共に、妹とも離れ離れで一人家事に追われるセリー。
ある日、村に人気歌手のシュグが訪れセリーの元で滞在したことをきっかけに、新しい世界が広がる。
ちゃんとミュージカルだった。誰かが歌い出せば周囲が踊り出す。皆で歌う。なんとなく周囲が一丸となってノってくると明確な"ミュージカル映画"に思える。一人で熱唱する分にはまだ"ディズニー"の範囲。なんのこっちゃ。
出演は99%黒人、もしくは有色人種。大勢のバックダンサーも漏れなくそうなので見事。設定に沿った徹底的なキャスティング。
それにしても黒人の歌声は格別にソウルに響く気がする。あの絶妙なハスキーと深み、響きは黒人に与えられた唯一無二のものだと思っている。これも人種差別と言われたら仕方がない。でも音楽ジャンルの映画を観に行くかどうかの基準には少なからず入っている、主演キャストのルーツ。アリエルも然り……。
それこそ外国文学らしく、"置かれた場所で咲く"美学を感じる内容。
横暴な夫に罵られる毎日で自分への自信も将来の夢も失っていたセリーが、力強い友人や天性のスターに出会って輝きを取り戻していく。一度は都会へ飛び出すが、生家であるお店を相続できるというサプライズが飛び込み、セリーは故郷で自分のブティックを開業する。
引き離された妹と再会するのはお互い老人になってから故郷にて。この辺の哀愁も外国文学らしい。ハリウッド映画感覚では主人公が奇跡を連続で起こした流れか、落ちぶれて項垂れたタイミングに再会しそうなもんよね。
しかし妹との再会は少々面食らってしまった。姉である主人公は最後まで同じキャストなのに、妹は全然別人のキャストになっていた。そりゃあもろ若者のアリエルを老人化は難しいかもしれないけど、無理矢理でもいいから同じ顔で会いたかったな……。妹じゃない感が凄くて感動の渦はシュウゥ……と萎んでしまった。だって全然別人なんだもの……もちろん声も(歌声も)違う。観客にも再会を味わわせてよぉ。
明るいテイストだけど、ところどころで差し込まれる暗い時代背景は生々しい。
賢くて愛嬌のある妹は進学を許され、容姿も今ひとつな姉はあっさり男に売られる。家柄で見下されてしまう結婚相手。「雇ってやる」と白人に連れ去られ家族と引き離される母親。胸が痛い……。
男の暴力に屈しない力強い友人が、白人に殴られた時に殴り返すブレなさがカッコよかった。でもその後牢にぶち込まれて憔悴し切った様子がめちゃくちゃグサッときた。
子供達とも離れ離れになって、この友人が「殴らなきゃ良かった」「黙って雇われていれば良かった」と後悔していたらどうしよう……とグサグサきた。一言も発さないのが辛い。
それでも出所後に、主人公の夫への啖呵で初めて大笑いした後「ありがとう。もうおしまいだと思っていたけど、あなたは毎週会いに来てくれた。神はいるんだと信じられた」と伝えるところ、あそこは不可抗力で号泣した。ぶっちゃけ歌で泣くことは無かったけど、セリフで泣かされるとこは多かった。
内気な主人公が口元に手を持っていって控えめに笑うたびに、あたたかい気持ちになった。
ウーピー・ゴールドバーグ版気になる〜。
2024-02-11