オールドマン

Old Man

森で道に迷った青年が助けを求めた山小屋には異常な老人が住んでいた。

オールドマン

Old Man

お、スティーブン・ラングだ。観てみよう。
『ドント・ブリーズ』でトラウマ級の恐ろしさを見せつけたけど、何だかんだ強くてカッコいい爺ちゃん。今回もヤバい老人やってるらしい。

観てみたらやっぱりド級にヤバい老人だった。もうこのキャラで定着しちゃうぞ。かつ今回は両目をしっかり開いてるから「良かった、目が見えるね……」と謎の感傷に浸る。

ジャンル特に確認してなかったけど安定に狂気的だった。
山小屋で跳ね起きた老人がひたすら悪態をつきながら犬を探すオープニング。最初のうちは仲良しだなと思ってたけど、だんだんコロスとか言い出して不穏になる雰囲気。
そこにまさかの来客、やって来たのは森で道に迷った青年だった。ただ助けを求めに来た青年に老人は猟銃を構えて異常な警戒を見せる。怯える青年に対して脅したり諭したり怒鳴ったり笑ったり。緊迫した空気の中、嵐が来て青年は山小屋で夜を過ごすこととなる――。

最高にヒリヒリする緊張感。老人がボケてるのか本物のシリアルキラーなのか分からない絶妙な演出。
和解して「もう怖がらせたり傷つけたりしない」と約束した後もずっと不穏で良い。

でもまあ映画のセオリー的にこの展開は青年の方が異常でした的なパターンだろう。
案の定青年の言動も含みのあるものになって行き、さあどんな真実が明かされるんだ……! と思っていたら。
まさかのスピリチュアル系だった!
結果的にはシークレット・ウィンドウだった。すなわち全部老人の妄想、初めから青年など山小屋には来ていない。そう来たか〜〜!

とはいえただの幻覚オチではない。青年は単なるイマジナリーではなく、若い頃の老人自身の姿。青年が語ったバックグラウンドも全て老人のものであった。
これ巧妙なのは老人も青年に自分のことを話しているんだけど、その微妙なズラし方。
老人は「副業で営業マンをやっていた」と話すけど、青年の方は「運送をやりつつ副業もこなして頑張った」みたいなことを言う。片方ずつを明かしてたんだな。
昔に妻と別れたと言う老人と、妻との関係に悩んでいると言う青年。これもまた別の人生に聞こえるけど別れる前・別れた後というだけだ。
出身や義実家のことについて老人が尋ねるから青年は洗いざらい話すけど、老人は質問されないから答えない。そりゃダダ被りだしね、はぁ〜スッキリ。

スピリチュアル展開で真相解明していくテンポは良い。自分の過去のおぞましい過ちに苦悩して、そんな幻を生み出していた。
青年が妄想だったことに気づいて項垂れながらベッドに横になる老人……で嫌な予感がしたけど、やっぱり。次の瞬間には跳ね起きて犬を探し出した。ここでエンディング。
もう〜頭を抱えるやつだわ。誰かこの老人を救ってやって……と胸が痛む。

老人が探していた犬は犬ではなく男だったけど。こいつが何者かはとりあえず置いといて、この男が毎晩食糧を届けるついでに老人に真実を伝えに来る役目らしい。

そこで考える、毎日ループならここまでの流れで消費されていたものは? 最初に飲む酒、一発の弾丸、青年に振る舞うコーヒーと缶詰、薪。
それぞれストックあったけど、その他は男が足してやってるということで一応成り立つか。なるほどね。

8割ぐらい老人に緊張しなきゃいけないのでまあまあストレスな映画だった。自分だったら丁重に謝って早々に出ていく。
2023-12-11