ちゃっかりお借りしたので鑑賞。トニー・ジャー、聞いたことはあるけど出演作品も顔も特にピンと来なかったので口コミで勧められてただけかな。思っていたより綺麗な顔をしていて驚いた、ちゃんと主人公だ。
タイ産アクション映画をちゃんと観るのは初めてかも。ムエタイって良いよなあ。時折眺めるムエタイ動画で脱力感×足技というイメージがあったけど、今回のアクションを見ると割とがっちりとした型があるもんなのかな。そして足と同じくらい肘も駆使するらしい。椅子とかにぶつけて痺れて動けなくなってた学生時代を思い返すと、かなり鍛え上げられた肘だろう。
かつ、カウンター技のイメージ。向かってきた相手にリーチ利用したキックはかなり凶悪。腹キックなんか見てて「うぉあ〜」となる、ちゃんと痛そうなアクション。
そして異種格闘技ファイトにおけるムエタイの映え加減よ。かっこいいよね。ファイティングポーズというか、どんな大技決めた後でも基本の姿勢にビシッと戻るのが良い。
アクション全振り映画かと思いきやお話もちゃんと面白い! 村の仏像の頭を盗まれたので、悪党を追って青年が身一つで街へ向かう。この純朴で無欲(そして筋肉)なザ・村の青年が治安悪めな中心街に降り立つだけでもう楽しい。からの地下闘技場で巻き込まれファイト。ムエタイでワンパン。だいぶ良い。王道でもこの流れは無条件にワクワクする。ワンパンというかワンキックか、逆立ちみたいにして顔面キックからのスイっとファイティングポーズに戻る、これは良い。
アクションももちろん良い。基本的に攻撃は全然当たってるし、やられる側の二次被害――蹴られた後に柱や物にぶつかるとか――もちゃんと痛そう。体はまだしも顔面や頭部をモロに食らってるのは凄まじい。やられる側も運動神経? 格闘センス? が高いものほど良いやられっぷりを担当できるんだろうな。
市街地の追いかけっこはもはや障害物競走だけど楽しいのでヨシ。もうムエタイどころか新体操というかブレイクダンスというかその辺のアクロバティックも全部披露していた。すごいところは漏れなくスローでリプレイしてくれるので優しい。世界一かっこいい車の股抜きを見た。
痛そうなアクションに関してはチェンで衝撃を受けた自分だけど、これに関しては役者の運動神経に全てを託したアクロバティックの連発でだいぶ華やかだ。主人公もシュッとしてるしね。
カーアクションならぬトゥクトゥクアクションも面白い。流石に初めて見たジャンル。今の撮影技術ならもっとやれそうね。特典も見たら撮影してる時にアメリカのCM撮影チームが来てたらしく、「向こうは予算も全然違う……使ってる機材もトゥクトゥクも全然違う……」てぼやいてて笑った。向こうは壊さないしな。
他にも足に火つけたり棒術を披露したり。個人的には最終決戦のドーピングでオーバードーズ敵vs秘伝のクスリをキメた主人公のガンギマリファイトが嬉しかった。どっちもムエタイだしね! ゾーンに入った主人公の、直立ノーガード→カウンターのスタイルは「そうそうこれこれ」感のムエタイで楽しい。
特典で「貴重な古式ムエタイを披露できる」「古式ムエタイを見せられるのは初めてだから」という言葉があったけど、この映画がタイ映画におけるまじもんのパイオニアだったのかな。「外国映画だったら……」「外国映画みたいにしたかったけど……」とかもちょいちょいあったので、やっぱり香港やハリウッドリスペクトの挑戦だったんだな。アクション映画市場では微妙な日本勢的には親近感。20年前のだけど。トシロウがアクティブ空手の使い手でガッツリ出てくれたので大満足。
ところで冒頭の師匠の教えは発揮されたのだろうか。ムエタイを極めていいけど使ったらいかん的な。てっきり最後の最後とかここぞというところでムエタイ使っちゃうベスト・キ◯ド的な感じかと思ったら、割と序盤から駆使してたな。断然使ってもらった方が嬉しいから構わないけど。
にしてもハム・レイ死ぬとは……生きてたっていいじゃない……。とにかく姉と親友続けて亡くした女の子が不憫、村に行ってたけど学校には通えたのかしら。幸せになってほしい。
【追記】
その後周回し倒して返却後に無事購入。新しく買った方はかっこいい外装のパッケージが無かったけども……。
改めて観るとやっぱりグッとくるな。あんなに心優しい敬虔な仏教徒の青年が人体破壊するマジ蹴りで無双する姿は。仏像のためとはいえ、その鬼気迫る感じが良い。
チェン映画と違う新鮮な衝撃はその辺かしら。特典にて「カンフーにはリズムがある」の言葉には納得した、そのテンポを除いた蹴り合いだから最終戦は特に喧嘩感があって堪らないんだな。また観よう、へへへ。
2023-10-05