ファンタスティック・プラネット

La Planète sauvage

ドラーグ族に拾われ、飼育された一人の人間。脱走して他の人類に学問を広げるが、脅威を恐れたドラーグ族による虐殺が始まる。

ファンタスティック・プラネット

La Planète sauvage

有名だけど観てないシリーズ、プライムビデオでしれっと配信されてたので早速鑑賞。
一番の衝撃は志人(feat.)の『禁断の惑星』のサンプリング元が分かった瞬間。テールが玉乗りしてる時のBGMね、もろイントロでだいぶ衝撃だった。巻き戻して3回聴いて、観終わってからもう一回聴いた。むやみに小生物を捕まえて殺す生物の笑い声も、その次に映る歩行生物の軋んだ音もガッツリ入ってる、めちゃくちゃ聞いたやつだ。いやコレはびっくりした、タイトルもタイトルだし元ネタこの映画だったのか。あ〜〜もっと早く知りたかった。激アツだ。また鬼リピしよう。

思わぬ邦ラップとの繋がりに感激したけど普通に良かった。
幼少期に手塚治虫で一通りのSFを履修していたので、それほどのインパクトなりショックなりは受けなかった。でもまあトラウマになる人はいそうだ。やや不気味な絵柄と世界観で淡々と虐殺が描かれるのはキツい人にはキツい雰囲気。ドラーグ人と人類のサイズ比が我々と昆虫くらいなもんなので、指で弾いたり足で踏み潰したりといった直接的な描写は想像に易く生々しい。
そういえば漫画『GA○TZ』で主人公が同じように巨大異星人に飼われる展開があったけど、友人はそこで気持ち悪くなって読むのやめたと言ってたし、倫理観的なところでも拒絶したくなる要素がありそうだ。

ただやっぱりドラーグ人には知識が一つ足りなかったのか、それとも歴史が浅かったのか、ちょっとでも知能のある奴隷に学問を許すのは詰めが甘い。何よりどれより、人類が発語できてかつ言語でコミュニケーションを取れることを知っていたなら絶対に避けるべきだ。言うて人類を奴隷にも家畜にも利用していなかったし、その辺のポテンシャル及び脅威を甘く見ていたのかもしれない。

それにしても主人公テールのガッツは凄い。物心ついた頃からドラーグ人に囲われていたらその環境が当然になりそうなものを、意欲的に学習して世界を知り脱走した。ひょっとしたら目の前で戯れに母親の命を奪われた記憶が残っていたのかもしれない。
独特なのは全体的にひどく客観的というか。ちょいちょいテールのモノローグは挟まるけど、「この時僕はこう思った」とか「僕はこう思うからこうしたい」みたいな、心情に関わるセリフがほとんど無い。主人公の口数が少ない。終始神の視点というか、主人公の行動とドラーグ人の仕打ちをこちらはひたすらじっと見ている感じ。

展開も良かった。この映画がフランス映画ということを知らなかったので、ドラーグ人の言葉はオリジナルの言語だと思ってた。後半から「ノー」とか「セキュリテ」とか何やら聞き覚えのある横文字があるなと思ってたら、フランス語でした。あまりにも耳馴染みが無い、フランス語。その代わりラストのテールの語源を知って「おぉ……!」となった。これ、こっちで言ったら異星でいきなり主人公がアースって名付けられるから早々にピンときちゃうやつか。得したわ。
野性の惑星の秘密も面白かった。やたら重要そうな瞑想と繋がる展開、面白い。この描写は手塚でもまだ見てなかったものだった。まだ火の鳥何巻か読んでないのあるけども。

犠牲は出たけど平和な幕引き。SF、異星、戦争で言ったら手塚やFで散々虚無に陥らされてきたので覚悟してたけど。最後は和平交渉でホッとした。ただ8/6に観る内容でも無かったな……と鑑賞後静かに凹んだ。タイトルからは分からず。大事に生きよう。
2023-08-06