次元を行き来する強敵を倒すため、あらゆるバースであらゆるスパイダーマンと共闘する。
前作は個人的2019年映画No.1に輝いたスパイダーバース、二作目が出た!! 超嬉しい、絶対に観る確実に観る。だがしかし韓国旅行からの東京旅行で行けるタイミング掴めず、字幕版最終日にレイトショーにて滑り込みで間に合う。これ危なかった、チェックしてなかったら吹替えのみになっていた。アニメは吹替え派だけど主題歌が変わるとなると話も変わってくるのだ。特に音楽にガチなこの映画なら尚更。同じくスパイダーファンの姉を当日に誘ったら駆けつけてくれたので2人で鑑賞。 映像は更にレベルアップしてもはや表現の暴力。鑑賞後、姉は6時間ぶっ通しでゲームやったときの疲労感との感想だった。自分も一日つけたコンタクトが乾いて目がシバッシバだった。なるほど休日に観るべき映画。 タイトルがアクロス・ザ〜だし、前回マイルスのバースに他バーススパイダーが集結したのとは逆で今回はマイルスが色んなバースに行く。当然映像表現の幅は倍、更に倍である。序盤いきなり3Dアニメ世界にダ・ヴィンチ作画のバルチャーが出てきて度肝を抜かれる。でも、そうそう、この映画はこんな感じだったと思い出せた。デカい赤いバイク乗りこなすキャラが出てくると「お、AKIRAか?」とすぐなるマンだけど流石に自惚れすぎか……と思ってたら終盤で例の金田ドリフトが見れて大喜び。一瞬ではあったけど。今まで何度見ただろう、あのカット。擦られすぎてもう出てこないかと思ったけどレジェンドは色褪せないもんだ。8月の原画展には絶対行ってみせる。 インパクトあった映像はどこかと考えるとありすぎてちょっと絞れないが、とにかく世界観と映像演出はカオスすぎないギリギリを行くフリーダムそしてハイセンス。とにかくカッコいいことは全部やってくれスタイルの現場らしい、いいなあ楽しそうだなあ。そりゃサービス残業しまくるわ。 ストーリーは強敵スポットの野望阻止とマイルス個人の問題解決、そしてスパイダーバース全体の秩序の維持という3軸? て感じ。いつもなら強敵と個人問題の2軸がスパイダーマンの定番だけど、今回はスパイダーバースの問題もガッツリ絡んでくる。むしろ後半はそっちに尺をとっていて「こんなことしてる場合か……?」感はあったけどまさかの前後編に分けるパターンで納得した。 スポットに父親がやられる運命が確定だと知ったマイルスが止めに向かおうとするけど、それはスパイダーバースの全スパイダーに定められた運命に反することで、もし実行してしまえばバースが崩壊するとのことで揉めてしまう流れ。タイムトラベルものでいう、未来や過去に過干渉すると存在そのものが消えてしまう系のアレだ。「全てのバースと1人の命、どちらが大切だ!」と詰め寄るミゲル。そりゃ1人だよ。というかミゲル、過去のやらかしから運命の妨害=バースの崩壊と即断定してるけど、あれはシンプルにミゲルの失敗じゃないか。一例しかない、それも起きてしまった"死"を偽装したのと"死"を未然に防ぐのとでは話も違う。ソサエティのボスという立場と罪悪感でちょっとの異端も許せないのは分からなくもないけど。 マイルス異端扱いもちょっと納得いかんけど、ここでお母さんの言葉が沁みてくるのよね。うろ覚えだけど、「あなたを大事に育ててきた、あなたがどこへ行っても愛される人間になれるように」にはグッときた。過保護っちゃ過保護だけど、理不尽に束縛するつもりは無かったんだな。モラルの欠けた若者が目立つ昨今、より良い人間になれることを願うのは親の鑑。 全てを破滅させかねないマイルスを止めるため全スパイダーたちが彼を追うわけだけど、そんな状況でもグウェン、ピーター、遠隔アンドロイドはマイルスを信じて脱出に手を貸したし。再起動すればマイルスを捕まえられるというシーン、目が合ってその手を止めたアンドロイドに「ああ、ここにもマイルスの味方はいる……」と母の願いを感じて泣けた。 マルチバースとはいえこの世界はスパイダーバース、真実はバースの数だけあるけど結局みんなが辿る運命は同じ。このスパイダーにとってのベンおじさんはこんなキャラで、MJはこんなビジュアル! というメタ的なキャラ設定のバラエティを楽しんでたけど、「だからみんなベンおじさんを失うし、ハリーとは殺し合う」ということに繋がってしまうんだな。楽しかったのに急に「スパイダーマンには決められた試練がありどのバースもそれを避けることは出来ない」話になると途端に重くなる。 でもこれは初代(原作?)でのベンおじさんの死がいかにショッキングで悲劇的だったかを表してると思う。他のヒーローでもあんなにエグい身内の失い方はそうそう無かった……そもそも初代は何もかも暗いけど。救いようの無い罪悪感に苛まれることとなる、ベンおじさんの死。あの時おじさんの話を聞いていれば……あの時強盗を逃がさなければ……最後の会話で、冷たく突き放してしまったまま……。 二代目も同じようにおじさんを亡くすが、三代目では存在せず悲惨な最期は描かれない。平和なスパイダーマンのアレンジとはいえ、みんなが見たかった"ベンおじさんを失わない"世界線のスパイダーマンだ。 マイルスも叔父を亡くすけど、彼には血の繋がった両親が一緒にいてくれたし、何よりマイルス自身の身勝手な行動によって招いた死ではない。大きな違いだし、これも救いのある世界線。 マイルスの背後に初代の突き落とした強盗犯と死にゆくベンおじさんのシーンが流れてポロポロ泣いてしまった。これは皆が避けたかった運命だった……。 ナイーブになってしまったがコメディシーンも盛り沢山で今回も非常に楽しい。この手の表現力は日本語吹替え陣の方が面白いので後日そっちも見るとして。 大好きな3人スパイダーマンで指差し合うアレが再登場でめちゃ笑った。レゴスパイダーのセルフ起動音も笑ったし、電話中お父さんのぬるっと着地も不意打ちで笑う。 何よりどれより今回はキャラが良い!! めっちゃ良い。ぶっちゃけ前作の他バーススパイダーで好きなのはグウェンくらいだったけど、今回はインドスパイダーもパンクスパイダーもだいぶ良い。インドは性格・設定も最高だけど戦闘スタイルが優雅で良い。インドの神秘を感じる神々しさ、それでいて天然でアクティブ。だがしかしMVPはパンクのホービー。 このホービーたまらん、映画観た人だいたい好きになってる。めっちゃ良い声だなと思ったらジョーダン・ピール系常連のあのダニエル・カルーヤだった。最高!! しかしマイルスの言う通りマスクを取った方が魅力的。パンクロッカーだけど和を乱すほどの反抗はしない、でも常に余裕があるし我は通す絶妙なアナーキー加減。最初はなんだこいつ……となるけど終盤にかけて全てのスパイダーが敵に回る中、このホービーの異質っぷりがただただ心強い。シールドに閉じ込められたマイルスに手のひらを広げてみせたあのジェスチャーで落ちました。でも最後まで必死に助けるとかはしない、「俺やめるわ」と時計を外してバースに帰る去り際も良い。その後に最高の仕事をしていくのもヤバい。 王道ハンサムではないし癖も強いけどマイルスも制作陣もホービーをモテる奴として認識してるのに関しては「なんで分かるの……!?」という感覚。確かに全然落ちてるけど、この感覚が男性陣にも伝わるのは凄い。女性スタッフかもしれないけど。 この新キャラたちが魅力的すぎて前作のスパイダーたちがチラッと映ってもそんなに興奮しなかった。申し訳ない。そんなにハマってなかったのもある。 それにしてもバースの治安守るために組織作るのは良いけど、ソサエティをガッツリ作らなくても良かったんじゃないかな。1バース1スパイダーならあんなに集まってる時点で無防備なバースが既に無数に存在してるってことよね。親愛なる隣人を守るスパイディーはもう過去のものなのか。ちょっと寂しい。 前後編に分かれてるのは最後の最後まで想定してなかったから「これめっちゃ長くなるな……前編と後編に分けた方が良かったんじゃないか……」と思い始めたところでエンディングがきてちょっと面白かった。しっとりエンディングテーマかなり好き、サントラ落とします。 編み込みマイルス爆イケすぎたので次作がとても楽しみです。