ブライアン・デ・パルマなのー!?アル・パチーノの!?ここ最近で一番の驚きかもしれない。ここで繋がるとは。ていうかホラー作ってたのか。
有名だけど観てなかったシリーズ、こんなに有名なのに地上波とかBSで全然やらないね。と思ったらしょっぱなから女子高生たちのシャワーシーンで下まで全裸映りまくりだったからその辺引っかかったのかな。まあ結構な尺だったし家族で見始めたら気まずそう。グロの方は特に過激じゃなかった。
ホラーというよりドラマ要素が強かった。キャリーが超能力で人をやりまくるサイコキラー話というより、いじめられっ子キャリーが再起をかけて青春を謳歌しようと奮闘する話が8割くらい。で最後の最後、先生やクラスメイトの協力により無事に青春を取り戻しかけたところでいじめっ子に邪魔されて大失敗に終わり。からのブチギレ、その場でジェノサイド。この急転直下の展開はまあまあ衝撃だった。頭から血を被るのは有名だったけど、それを知ってたせいで終盤にかけてキャリーが幸せになればなるほど胸が痛くなった。最後は台無しにされることが分かっているから……。
とりあえず一番悪いのはあんないじめっ子の――"いじめっ子"で片付けるのも無理なくらい人として終わってる――クリスを育てた親、次にキャリーの将来をもぎ取りまくった親。キャリーの母に関しては完全なる毒親で、宗教にハマるあまり娘の成長も交友関係も全否定してくる。オープニングで生理を知らなくて大パニックになるキャリーは心苦しくて泣きそうになった。それを寄ってたかって笑うのはいくら何でも理解できない……トラブルはヒソヒソコソコソ協力し合うのが当たり前だったけど、治安の悪い高校なんでしょうなぁ。先生がマジギレして重いペナルティを課してくれたのは良かった。しかし向こうは中学で保健体育が無いのかしら。流石に高校生になるまで無知はそうそう無さそうだけども。
それにしても毒親のモラハラには本当にイライラさせられる。モラハラ耐性0なのね。生理ごときで娘を淫乱呼ばわりは正気とは思えない……というか自分も通った道なのにそれを棚に上げて罵倒しているのが理解不能。無理無理。それでキャリーも自己嫌悪して交友を絶ったり目立たないように過ごしたりしてるのがしんどい。子は特に、親から言われたことがダイレクトに響いちゃうんだよな。それを学校や友達っていう社会に触れることで、自分の家庭内が異常か正常かに気づいていくもんなんだけど、それまで絶ってしまうといよいよ世界=家族になってしまう。普通、高校生になるくらいには親と対等に話せるものよ。辛いわあ。
そんな毒親束縛被害者のキャリーが、先生やクラスメイトのスー(一方的に反省してキャリーを学校に戻したい女子)によってちょっとずつ自分の意志を持ち始めるのが素敵。しかしこのスーのやり方はなかなか雑。彼氏にキャリーをプロムに誘わせて二人で参加させる。それ、彼氏の評判を下げさせない?恋人いるのにキャリー誘ってるじゃん、的な。しかもそれがいじめられっ子だったら絶対ドッキリじゃん〜って陰で笑われること必至よ。と思ったら皆にはスーが彼氏に頼んだってこと噂になってんのね。それどっちも評判下がらない?まあいいや。
この彼氏のトミーがめっちゃいい奴。このポジションでこんないい奴なことある?ってくらい、いい奴。
最初は乗り気じゃなかったとはいえちゃんとスーの頼み聞くし、真面目に実行するし。何よりキャリーを傷つけない配慮が素晴らしい。「どうして私?」てガチトーンで何度聞かれても最後まで「スーに頼まれたから」とは言わない男気。「君と行きたいから」「俺の詩を美しいって言ってくれたから」と貫くイケメン。半分は本音だと思いますけどね!
あとはその動きを察した先生にスーと一緒に呼び出されて「あなたとキャリーじゃ釣り合わないでしょ?」とまあまあヒドイ質問された時も、沈黙してからスーの視線に振り向いて「な、なんだよ」て笑って誤魔化す。これ地味に、マジ紳士的で感動した。キャリーにもスーにも失礼にならない。半分は本音だと思いますけどね!!
このトミーとキャリーの二人は普通にドラマ感覚でニヤニヤしながら観てた。パーティーでの押し強めのアプローチがもうスーの頼みだからか本心なのか分からん感じ、学園ラブコメのノリで見てました。だがしかしここは進展するわけにいかないのに明日からどう立ち回るつもりなんだとは思わなくもない。キスしちゃってるし。まあ至近距離に一回ビビっちゃったキャリーからの「ごめんなさい、私何もできないの、本当に何も……」は(あ〜これは行くしかないですね)とこちらも思ったけど。おめかしして大変身状態だし。トミーは最初から最後までナイスガイだ。
こんなに幸せなのに最後はブチギレキャリーが全員殺しちゃうんだよな。ドラマ感覚になってたところからのそれなので正直温度差にあまりついて行けてなかったけど、絶望的な展開と言ったらそういうことになるのか。先生もトミーも死んじゃうのはシンプルに残念だった。好きなホラーは死んでほしくない人物が生き残るパターンだけど、これに関しては問答無用。それまでの良い流れを全部ぶち壊すホラーオチ。あちゃー……と面食らってしまう。
キャリーの超能力の存在感が結構薄かったのよね。時々家具をちょっと動かしたり、窓を閉めたり、鏡を割ったり発動はあったけど。それは母にも知られていない秘密だったから、別に超能力が原因で学校で目立ったりしてたわけではない。面食らう所以である。
炎の中で血まみれのキャリーの立ち姿は神々しかった。ドレス姿だったからなおのこと。
屍を後に帰宅して出迎えた母との最期も悲惨で本当に救いがない。スーは生き残ったけどキャリーの悪夢にうなされてエンディング。うーん、やっぱり一番悪いのはクリスの親、そしてキャリーの母である。ハッピーエンド誰か作ってちょーだい。
2023-05-27