何やら面白そうなので観てみる。公開当時は友達と観に行こう〜という話になって結局間に合わなかったけど、これマジで友達と観なくて良かったな。
非常に悪趣味、不快ホラーの中でもダントツな気がする。不快慣れしていない層が軽はずみに見たらトラウマになるんじゃなかろうか。映像のグロさというより発想のグロさ。確かに目の当たりにしたら絶叫というより主人公と同じく放心状態になると思うわ。理解を諦めるというか干渉を放棄するというか。関わらないで欲しいし触らないで欲しい。ご勘弁。
それがクライマックスの演出についてだけど、そこに至るまでは普通に不気味なサスペンス風味でだいぶ良い感じ。
離婚話が揉めに揉めて最悪な形で夫と死別した主人公。トラウマを抱えつつも心の休息を求めてロンドンから憧れの田舎の一軒家へ。(滞在は二週間と言ってたから引っ越しではなく休暇?)外観も内装も周囲の大自然も申し分なしだったが、ある日散策中に見かけた不審な男が家に押し入ろうと現れる。男は無事警察に拘束されたものの、管理人に神父に警察官に、この田舎村の男たちには一様に異常さがあった。畳み掛けるように不審男の釈放を知らされた主人公は狂気の一夜を過ごすこととなる……。
いや、全裸男性の唐突な出現はマジで怖かった。家の庭に不意に現れるとことか、動悸が止まらず鑑賞中断。数日後に続きを見始めるほどのダメージ。単純に生理的恐怖もあるけど、『ヴィジット』といい『イット2』といい全裸人物の不意のカットインが恐怖のツボらしい。現実にありそうな異常事態だからかな。それとも過去に何かしら直面して記憶に蓋してるんだろうか、人間って分からない。
しかし全裸男性が窓の外にいる状態に対して、生まれつき男性で社会を生きてきた人とは感じる恐怖値が段違いなんだと思うと歯がゆい。警察がその日のうちに釈放したなんて告げられた時は主人公よりキレた。無害かどうかじゃなくて、二度と現れないで欲しいのよ。この辺から既に不穏な兆しがあったんだろうけど。
サスペンスみがあったところまでは好みのジャンルなので楽しかったけど、やっぱりそれらが"超常現象"でしか処理できなくなるホラーになるとそんなに怖くない。夜に警察官が無言でじっと庭に立ってるのは怖い。でも電灯の一瞬の明滅で消えられると「そっち系かーい」となる。ご近所さんが急にこちらへガンダッシュしてくるのは怖い。でも瞬きで消えられると「なんやねーん」となる。これは個人の好みの問題だから仕方ない。
最終的に主人公の狂気なのか夫の狂気なのか、超常的すぎてやっぱり大混乱。村の男たちは実在してると思うんだけど、一体どこまでが現実でどこまでが虚構?
しかし後から思うとこの世界で唯一「外部」の人間って主人公の電話相手の親友だけなのよね。で、その親友とビデオ通話するのって主人公が家で一人の時だけだから、親友は主人公以外の村人を一人も見ていない。こりゃいくらでも虚構に出来ますわ。こわぁ。
納得いく形で言えば主人公に執着する夫による村のスピリチュアルな環境を利用した怪奇現象および嫌がらせ、自分の好きな系統で言えば夫に取り憑かれた主人公の幻覚。結果的に村人の死体は無かったわけだしね。教会で意味深に偶像と交信していたし。でも拘置所の全裸男性一人のカットもあったんだよな。あの一体は実在する霊媒的な、夫の器ってだけかなあ。産んでましたけど? そこは幻覚? ん〜〜〜分からん。ホラー苦手。考察班の見解でも確認しとこう。あんまり理解したくないけど。
なんやかんやドン引きクライマックスでも最後に夫が出てくると安心したな。無茶苦茶なところでエンドロール入って「ハァ!?」ってなったけど、最後に親友が迎えに来るシーンが入って心は救われた。なんか多分ハッピーエンドだ。良かった良かった。ただただ主人公が不憫で「どうしてここまで苦しめられなければならないのか……」と終始気の毒だったから。
怖いっていうよりはカオスと不快で心から友人と観なくて良かったと思う話だったけど、鑑賞中断レベルの切れ味はあった。
超常現象ドリフト、これだからホラーは苦手よ……。
2023-05-19