じんわり話題だったのが配信スタートしたので観てみる。
導入からなかなか良い。嵐の夜に何かが向かってくるような不穏な気配を一斉に見つめる羊たち……朝に切り替わるけど。この映画は全体的にそんな感じのが多かった。「ンな……何か起こる……!!」とドキドキの間を与えておいてスゥ……とシーン切り替わるやつ。テンポ重視の己的にはちょっと冗長に感じるけど終盤にかけてこの間の緊張感がガンガン上がっていくのは良かった。
基本とても穏やか〜良い雰囲気。時間がゆっくり流れる牧場の日常。場所が良い。地平線まで続く丘陵、連なる山々、大きな川に窓の大きな家……。もふもふの羊。
ある日立ち会った羊の出産で、羊ではない何かが生まれてから夫婦の平穏な日常が静かに変わっていく。
ただし生まれた何かの顔はずっと映ってて、それが普通に赤ちゃん羊なんだけど体は頑なに映らない。この時点でまあまあ察しがつくけど評価したいのはその正体の表し方。いかにもなカメラワークでジャジャーン! と映すんじゃなくて、途中でぬるりと全貌が映るのが良かった。リアルに目撃したような感覚でゾワっとくる感じ。凝視できる瞬間がものの数秒というのも良い。正体わかってからはずっと丸々映るけど、あの正体判明の瞬間のシーンね。あそこはなかなか記憶に残る。
第三章に区切って物語が展開していくので、途中で絶対第三者によって引き裂かれると思ったけどそれほど嫌な第三者は現れなかった。夫の弟がかき乱すかと思ったけどそうでも無かった。平和的な退場に拍子抜けした直後にあの展開、すごい流れだ。幸せな家庭から不穏な部外者を追い出して一安心、というところで全部失う感じ。あーぁ……。
最後のやつも現れ方がスッとしてて良かった。ナンセンスなんだけど映った瞬間はやっぱりゾワりと来たな。あの感情はまあまあ体感したことない種類だったけど、例えるんなら事故ったバスを振り返ったら中から異常な不審者が飛び出してきたあの映画……あれ観た時のゾワりに近い。タイトル思い出せない。お父さんにペタンと寄り添う子供、かわいかったなあ。なんか泣いてしまったな。でも確かに向こうからしたらこっちが極悪党だ。嵐の夜にやってきたのは奴だったんだろうなあ。
穏やかで長閑な牧場と不気味で血生臭い静かな事件、素敵。年齢制限はグロというより露出の方だったか。
2023-02-12