RUN

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車椅子の少女と献身的な母。ある日出された薬がいつもと違うけど何の薬かは教えてもらえない。

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姉宅でダラダラ鑑賞。車椅子女子が不穏な状況なので気になって見てみる。何となく強盗に押し入られる系かと思って見始めたらもっと温度感の低い不気味なサスペンスだった。

ぶっちゃけて言うと車椅子の娘を手放せくなった毒親の話。
娘は生まれつき病弱で車椅子生活な上に糖尿病や喘息などの症状も抱え、母の介護つきの日々を送っていた。そんな娘も高校卒業間近、受験勉強を続けながら志望大学からの合格通知を待つ毎日。
仲睦まじい親子の間に不穏な影がちらつき始めたのは母の買い物が発端。隠れてチョコを取ろうと娘が買い物袋を漁ったところ、母の名前が書かれた薬を見つける。内容をよく読む前に戻したが、その日の夜に自分用に出された薬にはその薬も混ざっていた。母に尋ねると不自然にしらを切られてしまう。
薬をよく調べようとするとラベルが自分の名前に張り替えられていたり、PC検索しようとしたらインターネットが遮断されていたり、薬局に問い合わせようとしたら電話が繋がらなかったり。明らかな妨害に不信感を募らせ、隙をみて薬剤師に薬を見せに行く。そこで知った薬の正体は……。

途中まで何の根拠もなく強盗ものだと思っていたので薬の正体が判明するシーンはなかなかショッキング。なんというかダブルパンチ。薬の対象もだし、副作用に見え隠れする母親の魂胆だったり。このシーンの娘の反応も絶望的で良い。何となく、大人に助けを求めるチャンスはもうこれが最後の気がしたから今助けを呼ばないと……と思ったけどそれすらも妨害されたな。非常に胸糞が悪い。

愛だけはあるので殺されはしないが、一生軟禁するための自由の奪い方が容赦無くて恐ろしい。からの二重三重の悲惨な真実、まあ読めなくもないけど娘にとっては地獄でしかない。そこからの不自由な体での展開がなかなか楽しい。

娘がちゃんと一貫して"不自由"なのが良い。超人的な火事場の馬鹿力を発揮するでもなく、ちゃんと動かない足と呼吸の辛い体。車椅子を掴まれたら逃げ出せない。化学の力と機転でどうにか切り抜けるスタイル。

この娘のキャラが良い、素直で明るくて正直で理系。正直というのが地味に新鮮で良かった、変に誤魔化したりヒヨったりせずに不審に思ったことはズバリと聞く。でも言わない方が良いことは上手く嘘をついてかわす、有能ムーブ。すごい好き。
そんな良い子が一番信頼していた母親に夢も希望も将来もむしり取られて絶望していく様が凄まじい。今まで育ててもらった恩も一瞬で吹き飛ぶ鬼畜の所業、終盤にはかけらの同情も残ってない感じの娘の表情も良い。というか殺人の時点でもう庇えない。

母親の怪演も見事だけど娘がとても良い感じ。誰も彼も見たことないキャストだけど新しい出会いのようで楽しい。郵便のおじさんがMVP。
2022-12-18