ブルークリスマス

ブルークリスマス

UFOの光を目にした人々はみな血液が青色に変質する。政府が打ち立てたのは"青い血は人間ではない"というプロパガンダだった。

ブルークリスマス

ブルークリスマス

  • UFOの光を目にした人々はみな血液が青色に変質する。政府が打ち立てたのは"青い血は人間ではない"というプロパガンダだった。

  • カテゴリー
    SFサスペンスドラマ
  • 公開年
    1978

  • 監督
    岡本喜八

  • 主演
    勝野洋

聞いたことあるので観てみる。タイトルがオサレなのでてっきり洋画かと思ってたら邦画だった。でも外国人をたっぷり起用していたりニューヨークやパリへロケしたり割とグローバルだった。

序盤で妻の血が青かったと告白するシーンが来たので妻が宇宙人展開かと思いきや、もうちょっとサスペンス色が強かった。いや社会映画色か。
いやいやその前にスルー出来ないのが、この告白をする旦那だけど演技が棒すぎて恐ろしかった。一体何があったのだ。割と重要な役なのに信じられないくらい棒演技で怯えた。のくせにキスシーンやベッドシーンがあるので地味に腹が立った。当時のアイドルハンサムか何かか。

それはさておき、主人公は基本的にその相談を受けた記者だけど終盤から国防省の男にシフトする。後者はオープニングからちょいちょい現れるけど特に大きな動きはしないし、何やら順調な恋路が挟むばかりで何なんじゃいと思っていたらラストにかけて急激に存在感を出してきた。記者は死ぬわけでもないし、あんまり見ない主人公チェンジ構成で地味に新鮮だった。

SFなんだけど全体的に落ち着いた、不気味で社会派なトーンだった。はっきりUFOの存在を認めているけどUFOは一度も映らないし。UFOの光を目にした者は血が青く変質するのだが、各国機関は頑としてその事実を認めない。その間にも青い血の人間は続々と増え、とうとう国は血液検査を行う。そしてかつての独裁国家のように、青い血の人々を国外の機関へ収容し「青い血は人間ではない」として"処分"してしまう。何も知らない国民には青い血の者は地球外生命体であり、人間に紛れて征服を企んでいるとして不安を煽らせ、洗脳していく。
この辺の展開が何とも不気味で恐ろしい。宇宙人が"来る"んじゃなく、人類が"変質"させられる。それが新たな差別を生んで政略的に抹殺される。変質の真実が解明される前に、国民の非難を買う前に、プロバガンダを打ち立てて正当化して虐殺する。王道SFな地球外生命体vs人類ではなく、宇宙人が介入したことで人類vs人類になる。救われない結末。

ゾッとするのはその虐殺を実行するための作戦……。なぜ恋人は青い血であると検査結果が出たのに野放しにされているのか? よりによって国防省で実行する側の男が直面するむごい現実がただつらい。歴史上本当にこういうことがあったんだろうか。
それで言ったら輸送される船の中で見せられる「これから皆様の行く先は……」映像が淡々と説明される内容の恐ろしさに震え上がる。かつて、逃げられずに犠牲になった人々がいることを思うととにかく悲しくなった。20時になった瞬間無音になる演出は特に鳥肌が立った。

SFだけど独裁国家の再来が軸に来る、暗い暗いサスペンス。
2022-10-30