そういえば観に行ってなかったやつ。雰囲気良さそうだし気になっていた。観てみてびっくり、ロバート・パティンソンとウィレム・デフォーだった。チネ・ラヴィータでひっそり上映系だからそんな豪華な二人とは思ってなかった。しかもA24だって。へぇ〜。
思っていたよりスピリチュアルなサスペンスホラーで、硬派な殺人事件だとか犯人探しは巻き起こらない。本当に二人きりの閉鎖空間で片方がどんどんおかしくなっていく。人魚の夢、海鳥の死、やって来ない視察船に激しさを増す嵐……。いくつもの不穏な兆しが折り重なり、幻覚や妄想が現実に侵食していく。一人が恐ろしい秘密を暴露した日、大波と共に僅かな理性の糸が切れてしまう。
お話は『シャイニング』で演出は『2001年宇宙の旅』を思い出したから全体的にキューブリックみを感じるということかもしれない。種類で言ったらそんな感じ。呪われた方が正気を失っただけの話にもなるけど、含みのあるシーンが多いからぜひ考察を漁りたいところ。漁ってないけど。要所要所についてのスッキリしたさはある。
80年代の舞台、白黒の映像、ほぼ正方形の画角が雰囲気たっぷり。この雰囲気が無いと「いやただの灯台じゃん……仕事せい」てなっちゃうから結構大事な要素だった。現代のハイテクじゃ"本当の孤立"ってなかなか難しいもの。にしても天気の良さ、昼間を感じられない白黒は息の詰まるような陰気さ出すのに抜群だと思う。真っ暗な劇場で見てたら更に暗い気持ちになってそう。
ずっと暗くて気が滅入りそうだけどロバート・パティンソンがやっぱりべらぼうにハンサムでドキドキしちゃう。絶叫して転げ回っても人形で慰めてても灯台でトリップしてもだいぶ良いからドキドキしちゃう。ウィレム・デフォーを見下ろして「吠えろ」なんて跨いだところはだいぶ素敵でドッキドキしちゃう。ダメだなあ、変かもなあ、自分。でもボロボロになる主人公って無条件で良いよなあ。
にしても上司のパワハラは見ているこっちも腹たってくるから一旦どっかで詫びては欲しかったな。海鳥が無くても多分ブチギレる時は来るよ。あの日帰れなかったのが致命的だったんだろな……それ含め呪いか……。元々どっちも狂気が潜伏してたからこんなことになったような気もする。どっちが正しいのか割と混乱させられる、そのサスペンスも面白い。
特にヤバめの、そして長回しのセリフが大体ワンカットなのも監督の絶妙な狂気を感じたよ。灯台トリップの後ろで鳴ってるのがよく聞いたらバリバリに割れてる絶叫だった時は「おお……!」となった。
主役がどちらも非常に良かったけど二度と観ない系。でもキマったロバート・パティンソンを嗜みに再来はするかもしれない。うーん、素敵。
2022-10-16