サイコ2

Psycho Ⅱ

社会復帰した精神異常の殺人鬼、バイト先の同僚が自宅に転がり込む。

サイコ2

Psycho Ⅱ

おお、『サイコ』の続編で主演も同じ人だ。早速観てみると映像がカラー。すごいや、と思っていたらサイコがおじさんになってたから「あれ? 青年じゃなかったっけ」と思いつつ観続ける。いや絶対青年だったなと一回中断して調べる。一作目が1960年でこちらは1983年。ええ!?! 20年経ってる。そりゃおじさんにもフルカラーにもなるか。20年越しに同じ主演でそのまま続編って、今で例えると『マトリ◯クス』みたいな感じ? いや、あれも完結した3部作に+αって感じだし、やっぱりこっちの方が凄まじい。うわー、不思議な感覚だ。

設定もそのまま20年経ったことになっていて、その期間サイコ青年は服役&精神治療してたらしい。正常な判断力を持たない状態の殺人ってことになってた的な。6人殺した異常者の社会復帰に猛反対するオバ様の署名も効かず、サイコは正常に戻ったとしてモーテルに帰されてしまう。

そもそも一作目の犯罪の闇が深い。サイコ青年としては"精神異常の母親が連続殺人を犯すのを息子の自分が必死に隠蔽している"ことになっていたが、その実、自分が母の扮装で人を殺し続け、息子に戻った自分が隠蔽していた。すなわち妄想の中の犯罪者は自分自身だったという『シークレット・ウィ◯ドウ』パターンだ。古典を現代の作品で例えがち。
一作目ラストのニュアンス的には母親の妄想に取り憑かれた哀れな殺人鬼、という感じで、今作も母の幻覚と向き合って再犯を逃れるため苦心する流れ。
だがしかし! 一作目鑑賞後時点では「母親関係なくやっぱり青年自身が一番異常でやばい奴なんじゃないか」と感じずにはいられなかったけど。そういう余韻を残せたのがヒッチコックの手腕てやつなのか。
でも今回は青年(現おじさん)の本当の部分は善人! という設定に振り切っていた。悪いのは母の幻影だけだ的な。そうかあ。そしたらタイトルのサイコとはまた違うんじゃない? と思ってしまうけども。サイコパスと妄想狂は別でしょう。潜伏した本来の狂気と病気ってものはさあ。まあそれは置いといて。

モーテル経営に復帰しつつアルバイトも始めたサイコおじさんだけど、問題の実家に帰るとどうしても母親の存在を感じ取ってしまう。それはバイト先で知り合った女子と成り行きで同居を始めてから更にひどくなる。死んだはずの母親の声が聞こえたり、電話がかかってきたり、窓からその姿が見えたり……。
自分がまたおかしくなってしまったと思い悩むサイコおじさんに、同居のバイト仲間は優しく寄り添う。おじさんの心優しさを知っているからこそ、あなたは殺人鬼なんかじゃないと慰め続けるのだ。

一作目から続けて観るとこのサイコに毛程の同情もしないけど、20年も間が空けば変わるもんか。個人的には一作目の青年は本物のサイコパスでかなり魅力的だったけど、妄想に憑かれた善人と描かれるとどうにも。可哀想の感想しか出てこない。

でもサスペンス要素は濃厚だった。単純な構造にとどまらず、事実は二転三転してものすごい展開に……面白い面白い。面白いけど真相ドリフトで終盤ごっちゃごちゃになってる感もなきにしもあらず。ちょっと強引だな。でもサイコおじさんの口笛の雰囲気はとても良し。
実家が映るたびに一作目のレトロホラーな音響が素敵だった。このモーテルの雰囲気、やっぱり良いなあ。

途中、ああ〜このカットの画良いなあ〜と思ったらポスターに使われてた。そうよねぇ。
2022-06-11