人類が永遠の命と引き換えに生殖機能を失い滅亡の一途を辿る未来。一人の調査員が地下世界に潜入するが、そこはかつての人工生命体が蔓延る荒廃した社会だった。
実家で母が勧めるので鑑賞。観ようとは思っていたけど後回しにしていたやつ。思っていたよりガッツリした内容・濃い世界観で良かった。コレが(ほぼ)一人の日本人が作り上げたストップモーションである&世界的に評価されたという前振りが無ければ日本の人々は本当に手放しで絶賛したのかはちょっと気になった。「ここで終わるの!?」とは思ったけどディープな世界観なのでこのまま予算を上げて続編を作るのかもしれない。 汚染された人類世界、機械化した人間、独立する人工生命体、天と地で独自に発展する社会……等々設定そのものは目新しいわけではないが、とにかくキャラクターが魅力的。主人公のロボ顔も可愛らしいけど、地下住民の顔立ちが愛嬌ある。似てるけどそれぞれ個性がある顔。そしてインパクト最強なのは虫(クリーチャー? マリガン?)たち。初っ端からエイリアン顔ゲジゲジスタイルの虫の気持ち悪さが絶妙。後ろの顔がフンを吐く発想は最悪だけど見たことない演出だったのでほぉーとなった。その後も次々出てくる虫たちの形態がバラエティ豊かで圧倒される。蹄型、モンスター型、ワーム型にクモ型、ラスボス型……よくこう気持ちの悪い造形を作り出せるもんだと感心。あとはクノコ栽培所、ひたすらゾッとしたけど何故これを見てゾッとするのか我ながら説明がつかず謎だ。倫理的な何かに引っかかるのかな。この手のゾワゾワは邦アニメでしか味わえないものがあるけど、それに通ずるDNAが今作にも含まれているのかもしれない。 でもクノコお使いの一連のシーンは千と千尋みがあって絶妙なノスタルジーに駆られた。未知の世界で未知のものを買いに未知の道を一人でお使いしに行く感じ……。そこに存在する生物・住民・機械道具にはそれぞれに築かれた文化があり、歴史があり、理由がある。当たり前に生活する彼らの中に共存して少しずつ未知の文化の一部になっていく感じ。良いなあ。最後に嫌な奴が成敗されてクノコをちゃんと取り戻せたのは安心した。 時々奇妙に明るいロックがかかるのは不思議な気持ちになったけど未来はそういうもんなのかもしれない。 動きは滑らかで後半全く違和感なく観ていた。小ボケやしょうもない動きまで滑らかに乱発していたので製作者の情熱をひしひしと感じた。これぞプロフェッショナル。 思いのほか惨たらしい演出が多々あって些か衝撃だったけど、知らない世界ではショッキングなものを見せられた方が素敵だ。マジで異世界に来てしまったという不安と絶望を観ているこっちにも強烈に訴えかけてくる。 不安と冒険とほっこりのバランスが絶妙で記憶にビシビシ残る映画だった。