犬神家の一族

犬神家の一族

犬神家の財産は一人のお嬢さんの選んだ男の元へ。三兄弟の母が血みどろの遺産争い。

犬神家の一族

犬神家の一族

好きな映画は何ですか? のガチ回答の一つに挙げちゃう犬神家の一族、マジで何回観るのか分からないけど4Kでリバイバル上映と聞いたら観ない選択肢は無い。マジで何回観るんだろう。佐清(静馬)のセリフ覚えちゃったよ。
しかしまさか犬神家の一族が前日から予約で埋まるとは思わなんだ。あたいが真ん中の列を取れないとは……しかし小さいスクリーンなのでそれほど歪みもなく観れた。当日は更にほぼ満席になっていてビビった。みんな好きなんだな。再放送も配信もしてるのに……どちらでも観てるけどさ……。

角川映画祭だからいつもと違うオープニング、第一回の作品だったのか! そりゃレジェンドにもなる。
そしてとにかく映像が引くほど綺麗で圧倒される。数年前の映画ですと言われても疑わない、キレッキレの画質。故に人形のちゃっちさも鮮明に映り込むがそれも趣なので気にならない。逆さまの足に毛が生えてたのは初めて知った。アップの所はヒトの足を使っていたのか。
音声も流石に時代を感じるものだったけどその味を楽しみに来ているのだから構わない。改めて音楽がいいなあ。

そして高画質でも男前な石坂浩二、やっぱり金田一はこの人が好みだ。話し方が金田一としてイメージど真ん中。まず良い声だし、物腰穏やかなトーン、ナレーター的な抑揚、丁寧な口調が本の柔らかい話し方にとてもピッタリ。そしてうっとり。声で言えば佐清もいい声だ。この映画はいい声が多い。
かつ、この時のパーマ無しの天然もっさりヘアーの金田一も好みだ。この時が一番良いと思うわぁ。金田一耕助ポイント・不潔さ&背が低い要素には欠けるけどスマートがあったって良いじゃない。

そんな優しくて穏やかで庶民的なモサモサ探偵さんの周りで血みどろの殺人事件が起こりまくるから堪らない。この不気味なコントラストにハマって長いこと経つ。惨殺死体を見て絶叫して頭抱える探偵なんて金田一以前に見たこと無かったもの。この探偵から目が離せなくなる所以である。
あとはこの殺人事件のドラマチックな怪奇演出、改めて良い。ただの遺産争いなら内容は地味だがそこにあの有名な佐清が加わるから物凄い。三姉妹をはじめとした一族の異様さも、佐兵衛の歪んだ嗜好も、静馬の存在も殺害方法も。この昭和の日本映画でしか味わえない不気味さ、こぉ〜れは良い。ここでしかえられない娯楽がある。『獄門島』も『悪魔の手毬唄』も大好きだけどリピートしてしまうのは犬神家だ。(神様、やっぱりこの石坂金田一の『八つ墓村』を作ってください。)ハマり倒した結果、大人が真面目に書いた『犬神家の戸籍』なる本も買ってしまったし。勉強になった。

演出もじっくり見るとなかなか素敵なものが多かった。金田一耕助と古舘弁護士が珠世の出生について話すシーン、内容が深くなるにつれてだんだん暗くなってくる部屋、いよいよ真っ暗になろうかというところで弁護士が部屋の明かりをつけて、話題が進む。日光も人工で調整していたのか……あまり見たことのない見せ方だったから印象深い。あとは汗。松子夫人の額に汗が滲むと緊迫感がひしひし伝わってとても良い。物心ついた頃から映画で俳優が汗をかかなくなったけどどうしてだろうといつも思っている。父は「いらなくなったからだ」と言うけど、あった方が良いと思うんだけどなあ。個人的な趣味なのかな。それも否めないけど。

劇場版金田一は他に何作か感想書いてたので被る部分は割愛するが、やはりこの時代この作品でしか感じられない雰囲気、世界観は絶妙だ。おぞましいホラー要素が注目されがちだが、佐清と珠世さんの純愛や松子との親子愛、静馬の非業や佐兵衛の悲恋などヒューマン的なドラマ部分にもグッとくるのだ。生きているうちに大画面・大音響・高画質で犬神家を堪能できて良かった。大げさか。今度は獄門島でお願いします。
2022-03-06