藤原くんが死体を隠す話? 観る観る。キャストをよく見たら松ケンが!! 『デ○ノート』ファンにはグッとくる組み合わせ。しかし今回は頭脳戦も心理戦もすっ飛ばした行き当たりばったりな無計画隠蔽工作。その素人感が売りなのね。
ツカミがめちゃ良かった〜。白昼堂々の不審者ほどゾワゾワくるものってない。『臨○』しかり『脳○』しかり、『藁○楯』しかり。このゾワゾワは邦画でしか味わえない。不審者の導入がかなり生々しくて良かった。若くて清潔感あったから生理的嫌悪ってほどじゃないけど、性癖がアカンね。でもその罪状は既に藤原くんの方が極めてたね。国ちゃんで……。一瞬オマージュかと思ったけどそんな不謹慎なオマージュは無いか。原作があるらしいからたまたまかな。
島の風景がまあ風情があって癒された。ほとんど晴天の日で海も爽やか、農園も穏やかで人も温かい。そこでどうしようもない殺人事件、だから良いのだ。でも地獄度合いで言ったら想像を絶するほどではなかった。序盤で娘がやられちゃうのかとドキドキしたけどそこは回避されたし、隠蔽した仲間内で強請ったり殺し合ったりも無かった。家族が社会的に終わることも無かったし、島民の意志も固かった。救いようのない地獄にどんどん落ちる、というよりは古畑任◯郎スタイルで犯人側視点をドキドキしながら味わわされる感じ。いや、もちろん絶望の連鎖なんだろうけど『藁○楯』のハードルが高すぎてまだ本当の地獄は体感しきれなかった感じ。
まず殺されたのが島民じゃなくて他所者だった時点で随分救いがある話だと思った。そもそも殺人ではなく過失致死、しかも正当防衛。その上相手は凶悪犯罪の前科持ち。全然救いがある、精神衛生上。善良な市民になすりつけることも無かったし、死体の扱い以外は最初から最後までクリーンな犯行だった。序盤のリアリティにグッと惹きつけられたけど、隠蔽からはスリルはあれどリアリティがもうちょっとという感じ。でも松ケン非常に良かったな〜。キャラ的にも演技的にもだいぶ良かった。一番は町長だけど。
どこか、生きるか死ぬかというガチガチの本気度で頭のネジが外れた隠蔽計画と駆け引きを期待していたから、そこはちょーっと優しかった。でもスリルはあったと思う。刑事さんがいちいち鋭かったのだ。カマかけてくるのは鬱陶しかったけど割と分かりやすかったから松ケン同様引っかかりはしなかった。ふふふ。
音楽も印象的。町内放送で流れる曲が『田園』とかクラシックばかりで、こいつぁ猟奇的なシーンにも流れてミスマッチになるに違いないと思ったら思いのほかずっと流れっぱなしだった。でも自殺で流れたから良い演出だった。趣味は良くないか。『バトルロワイ○ル』のせいで『運命』はトラウマになったけどこれもそんな狙いがあったのか。
人を殺す夢はしょっちゅう見るけど、やらかした直後まず頭をよぎるのは家族の将来だ。自分の未来はともかく家族の未来が社会的に終わるのが一番の絶望だった。父の職位は……母の精神は……姉の勤務先は……姪や甥の将来は……(いないけど)。藤原くんはその点家族の未来を一瞬も案じていなかったのは意外だった。自営業だからか? 家族は大事にしてるらしいけどその描写が特に無かった。島と自分の地位ばかりだ。狭いコミュニティの一種異常な結束に縛られまくっていた影響か。そういえばそんな話もしていた。島の絶妙な狂気は結構良かった。
最後のは〜演出がちょっとテンション下がったけど、もうひと展開無ければダメな流れだったから仕方ないか。家族や島民は最後まで味方だし、全然救いのある犯罪映画だった。
2022-01-29