ヒュー・ジャックマン引退してなかった……!! 記憶だの未来だのってワードが飛び交うからSF大スペクタクル〜的なやつか、はたまたサスペンスと頭脳戦のイ○セプション的なやつかと観に行ったら、SF交えたハードボイルドものだった。記憶屋のヒューが謎の美女を追って色んなところに行ってどんどんヤバめの組織にハマって暴力に遭って味方を失いつつも真実を追求する、ハードボイルド。いやあやっぱり何かに取り憑かれてどんどんおかしくなってくのが似合う男ヒュー・ジャックマン。
ハードボイルドとは言ったけど全体的にさっぱりしていて滅茶苦茶複雑というほどでもない、でも感傷的な気分には浸れる、朝に丁度いいSF。午前の回で穏やかに観ることができました。ただ私の好きな、仕事とか復讐心で頑張る系のハードボイルドというより完全なヒューの私情(というか美女への単なる執着)で周囲の人に迷惑かけまくって突き進んでるようにしか見えない姿はあまり共感できなかった。これそんなに複雑な事情とか謎とか無かったら完全にヒューは面倒臭いストーカーでしかないぞと思い始めてくる。というかいくら記憶を体験できても店員さん(?)に全部見られるのは抵抗ありすぎるな。よくあのアプローチで攻められたよ……と思ったらやっぱり事情があったのか、そうでもなきゃ普通ドン引きよね。
近未来の舞台設定は割と面白い作り込みだった。温暖化による海面上昇で地球が水浸しになって、標高の低い地域がどんどん沈んで追いやられた人々から貧困層が生まれ、高地に陸を買い占めていた”地主”が覇権を握る格差社会。また温暖化で日中の異常な暑さが当たり前となり、社会は”夜行性”になる。夕方が一日の始まりで、公務員も真っ暗になってから出勤し、施設は開き始める。奇妙だけど不思議な光景が面白い。ただしこれがストーリーの何に関係があったのかは分からなかった。暑いぃ〜みたいなシーンも無かったし。
しかしその社会の歴史をきちんと投影した描写というか、その中を生きてきた個人個人の考え方、出身地や浸水時の境遇なんかで派閥が生まれるのは面白かった。架空の社会で見てみたいのはこういう要素よね。ただ! 最後のシーンは〜いるかな……無くても良かっ……無いほうが良……そんな野暮は言わない。幸せな瞬間で終わる話、っていう伏線をどうしても拾いたかったのだろうが、無いほうが……そんなことは言わない。
2021-09-18