なんかポスターがかわいいのとゾンビ映画だと聞き好奇心で借りる。ガチ無知識で唯一わかるのはキャストが妙に豪華なこと。アダム・ドライヴァーにティルダ様、しれっとセレーナ・ゴメスも登場だ。
舞台は長閑な田舎町で3人の警官が町の平和を守っている。山に引きこもる世捨て人、電波葬儀屋、ガチオタクガソスタ店員、少年院の子供たちに性格の悪い農家と濃い町人がポンポン出てくる。そんなある日極地のデカい工事が原因で地球の自転軸がズレて天変地異が訪れる。訪れると言ったら訪れる。日照時間がめちゃくちゃになったりペットや家畜が凶暴化したり電波が繋がらなくなったりと異常な事態が日常を侵食していく。そしてついに死者がゾンビとなって蘇る。
非常にテキトーで良かった。前半がだいぶ丁寧だったのでゾンビ出てからのヤケクソ感が妙に面白い。この令和に墓場の地面からド直球に這い上がるゾンビを見て大笑いしてしまった。清々しい。この監督? が世のゾンビ映画・ホラー映画を網羅しているであろう感じが滲み出ているからこその開き直り感が楽しい。R15らしい割とショッキングなグロ描写もあってドキドキ。「シャルドネ……」はピャー!!!となったけど、それでもバーン! というアメリカンびびらせはほとんど無く、結構安心して観られる。
アダム・ドライヴァーのメタ発言は笑っていいもんなのか微妙だけど監督の名前出たあたりでやはり笑ってしまった。何じゃこりゃ。立て膝ついてるお仏様の前で空手の道着姿で日本刀振るティルダ様はもうカオスだったけど最終的に考えるのをやめるくらいカオスになるからもうどうでもいい。
おかしい人とまともな人が何とも言えないバランスで混在しているからこそ、「アホだな〜」という呆れと「う、うげぇ……」というゾクゾクした恐怖感がごちゃまぜになる。最近のB級”風”映画じゃ久しく味わえなかった純B級のエログロナンセンスを味わった気分。エロは無いけどね。嘔吐する時もちゃんと遠くで陰に隠れてだったから信頼が置ける。
ゾンビ描写について、古典的な演出がほとんどだが時々なるほどなあというのもあり。土葬から蘇ってるから撃っても切ってもぐちゃぐちゃの臓器とか血飛沫なんて出ないよね。土っぽいのが散って終わり。納得納得。というか、土葬って私服のまま埋められるのね。あとは日常の行動を反復するところ。生前好きだったお菓子や飲み物、趣味なんかをつぶやいたり再現したりしている。アイアム○ヒーローを思い出したけどあれもまた何かの影響を受けているのかな。「アイスキャンディー……」とか言いながらふらふらする子供ゾンビにしんみりした直後に「Wi-Fi……」「Bluetooth……」ゾンビが出てきて高らかに笑った。
一応最後はそういったモノの亡者になった現代の人間の末路の姿であるとして真面目なメッセージを訴えかけていたが、スカッとしない終わり方なので何とも言えない気持ちになった。ロニーの名前呼んできたところはグッときたけども。救いの道はないものか。しかし色々と久々というか、絶妙な気持ちになる映画は滅多に会わないので良い経験だった。
2021-08-13