ゴジラ

ゴジラ

海から現れた巨大生物が街を破壊する。

ゴジラ

ゴジラ

アマプラで観れた。図ったようなタイミングでおすすめに出てきたのできちんと観る。これがゴジラ一発目の元祖らしい。これにあらゆるSF巨匠が人生狂わされたと思うと感慨深い。

初見なので所々勘違いしていた部分もあり面白かった。水爆で生まれた奇形生物カイジューかと思ったら、元々棲んでたのが水爆で居所無くして出てきちゃった流れなのか。化学が生んだ超生命体モンスターというより島に伝わる伝説として語り継がれてた神秘的な存在だったのか。最初のエンカウント、良かったなーー。海でも港でも都会でもない、明るい日中の山の向こうからぬうっと現れたゴツゴツの肌。めちゃくちゃゾッとした。自分がぬるぬるツルツルCG映像に慣れきった世代だからか、こういう質感をもろに出される造形の恐怖に耐性が無い。あの動かない表情筋よ。うわー! こわー!! と声が出た。思ってたより、怖い。ずしんずしんと建物の向こうに姿が見える恐ろしさ。嵐のように街を破壊し尽くす様は確かに一周回って神々しい。これぞ怪獣、これぞ災害。

舞台が現代よりずっと遡るというのも堪らない魅力に満ちている。停電頻発のさなかラジオから流れるニュース、「〇〇区から〇〇にかけてゴジラが移動中です……」もうワックワクしちゃうね。緊急のオルゴールが鳴って避難勧告が流れたりね。今よりテクノロジーが発展していない分、電気が落ちていく街の中で大災害ゴジラへの恐怖の生々しさが段違いである。また映像が白黒というのが拍車をかけて、停電の夜がまじで真の闇でかつてない雰囲気を味わえた。破壊演出もすごかったね。何かの攻撃で、壁が壊されてからの外が見えるという演出はSFでよく見るけど、容赦無く天井がガラガラガラと全部落ちてくる描写はあまり見たことがなくて新鮮だった。いよいよもうダメだ、という絶望感が煽られて良い。最終局面でしかやらないところが多いのかな。いや単純にお金かかるのか。その点序盤も中盤も終盤も遠慮なく上から壊しまくってて良かった。

逃げ惑う子連れのお母さんの、「もうすぐお父さんのところへ行けるからね」て励まし方はなるほどそんな言い方もあったのかとじんわり。うちも今後こんなことになったらそう考えよう。父さん元気だけど。兄さんに合流するんだよ。最前線で報道するマスコミ勢が「さようなら皆さん、さようなら……」を最後にカメラを回したまま鉄塔ごと落とされるのはなかなか狂気だった。下手したらトラウマになるで。

そんなことより芹沢博士!! 元ネタここか。この世界線でゴジラを倒すために犠牲となった博士が、KOMの世界線でゴジラを救うために犠牲になるわけ。かぁ〜そういうことか。独眼竜は流石に継承しなかったんだ。しかしこの博士の存在こそがこの映画一番のメッセージが込められていたに違いない。原水爆、核の恐ろしさ、それに対する人々の漠然とした不安と恐怖を表現すると共に、科学が政治に介入することの危うさを訴えている。博士の葛藤する言葉の一つひとつが例の核爆弾による悲劇を仄かしているのは明白だ。時に海外の映画で放射能を軽々しく扱うものが見られるが(海で爆発させれば解決だとか、家具に隠れれば免れられるだとか)教科書と修学旅行とはだしのゲンで痛いくらいにそのおぞましさを思い知らされたこちら側からすれば、決して他人事ではない重いテーマである。観た人全員に大それた使命を課すのではなく、繰り返してはいけないということを刻んでいる。このゴジラ敵国にけしかければ一発だなとか一瞬でも考えた自分を反省したい。

SFが普及するよりずっと先に、ここまでリアルに、国民の生活にもろに襲いかかる怪獣映画といういちジャンルを生み出したのは確かに凄い。(どのサイトでもこの作品のジャンルがSFでなくアクションと表記されてるのはそのため……!?)これがレジェンドたる所以か。
2021-07-12