有名だけど観ていないシリーズに手を出す。この時代のジャック・ニコルソンしか知らんなと思いつつじっくり鑑賞。元々舞台モノだったのを紆余曲折経て映画化したらしい。そう言われてみればそんな雰囲気もある。
ストーリーは、気性が荒く暴力的な男が精神疾患(正しくはその「フリ」)を疑われ精神病院に拘束され、その閉鎖的な環境に抗い引っ掻き回していく話。あらすじだけだと暗くて陰鬱でショッキングなやつなのかなーとドキドキで観てみたところ、狂気よりも哀愁漂う物語だった。舞台みはあるが爽やかでも何でもない、何だかやりきれない気持ちになる。男、ジャック・ニコルソンは精神は病んでいないがただの危ない奴で、破天荒に精神病院に変革を巻き起こそうとする。やり方は雑だし口汚いし色々と人間的にひどいが正気なだけあって言ってることは真っ当で、ちょっと距離取りたくなるような人々にも隔たりなく人間として扱う。その患者も、いつも観てるような犯罪者の精神病棟患者とかと違ってちゃんとした患者(?)だからこそ心にくる。施設のトップである婦長は医者として完全無欠だが融通が効かず、患者を患者としかとらえない冷たい人物。娯楽の無いがんじがらめの共同生活にジャック・ニコルソンは嫌気が差すが、他の患者はそれが自分たちのためであると飲み込み受け入れている。
これが爽やかで楽しい舞台ものにならないのは、そのジャック・ニコルソンの暴れによって何も変わらないところか。結局婦長の方針は正しいし、職員も職務をきちんとこなしているだけ。患者は自由になってもやっぱり不自由だし、いつでも家に帰れる状態で反乱を起こす意味も無い。拘束・観察されてるのはジャック・ニコルソンと他数名くらいの中だけの話なのだ。問題を起こして他の患者たちに迷惑をかけるならと電気ショックをかけられどんどん人らしさを奪われていくのもただただ辛い。朝が来てしまった時の無力感、ビリーの天国から地獄、空っぽにされたジャック・ニコルソン……これは人殺しと何が違うのか? 病院として真っ当な処理だとしても虚しさでやりきれない。最後の最後、「残しては行かない、こんな姿のままでは」に胸がギリギリ締め付けられて涙がでた。何の涙か分からんシリーズ。一人めちゃくちゃ見たことある患者いるなと思ってずっと考えてたら中盤あたりで分かった、めっちゃ若いドクだ。
2021-03-10