パチモン感溢れるタイトルだけどクリストファー・ノーランが話題に出してたので好奇心で鑑賞。めっちゃ面白いやないか。ちゃんと面白くてびっくりした。それにタイトルは『Logan’s Run』だしこれは邦題の詐欺。
舞台は大気汚染や何やかんやで人類が巨大ドームに閉じこもった未来世界。そこでは人口爆発を防ぐため人々は30歳になると”儀式”によって殺される。同日に同人数の赤ちゃんが人工的に誕生し、消えた人々が”新生”したとして同じ名前をつけられるのである。この「完璧な世界」から逃げ出そうとした者はサンドマンと呼ばれる上位警察によって粛清される。それがごく当たり前に受け入れられているディストピアの中で、ある日サンドマンの一人・ローガンが「外界へ行き逃亡者の目指す”聖域”を破壊せよ」と特殊任務を言い渡される。
私は日本人なので「手塚治虫をギュッとした感じだ!!」という感想だけど良い世界観に良い展開。ローガンが色々と性格が最低なサンドマンなので全然好きになれないと思ったがそれが変化していくから楽しいのだ。ローガンは、”儀式”なんて間違っていると反駁しつつ諦めかけている隠れ逃亡者・ジェシカに近づいて任務を遂行しようとする。ジェシカに真意がバレたらまずいので他のサンドマンに追われても逃げるしかない……テンポが良くてワクワクな展開が次々来る、追い詰められ度も良い。
何よりどれより、ローガンの同僚フランシス〜……この人物が罪深かった。フランシスこそ典型的なこの世界の住民で、システムに何の疑問も持たなければサンドマンの仕事に誇りを持っている。ローガンの行動を理解出来ず憤るが、胸熱なのは友達だからという理由でトドメを刺せずどこまでも追って行ってしまうこと。そして最後までローガンではなくジェシカの方を責めていたのがまた……追いついてジェシカを捕らえた時の言葉が「ひどい女だ。あいつはサンドマンだった、幸せだったのに」それがそいつの正義で真実だからな、泣ける。そいでローガンにボロボロにされた後の一言も……いや〜好きだ。話し合って欲しかったけど分かり合えないんだろうな。しかしその後のローガンの心境の変化というか行動もフランシスの存在を無駄にしない展開で救われた。私が。
物語的に非常にツボだったけど設定がちょびちょび気になる部分もあり。ドームの外は別に大気汚染でも何でもないのね……氷河でも猛暑でもないのか、と思ったけど人々はあまりに長い間閉じこもっていたから誰も「実は外、大丈夫なんじゃないか?」という発想に至らず、その間に気候は穏やかに戻っていったのかも。調査団とかいそうなもんだけど、そこだけ文明がストップしていたのか。それと、あくまで異世界でなく未来の地球設定なのに、外界の遺跡を見て「これは何だ?」と全く無知なのも気になった。が、その頃には歴史の重要さも希薄になって、人々にドーム以前の世界についての知識の教育は放棄されていたのかも。何より主人公が夢のある少年というわけじゃないから先祖の遺産に触れる神秘も無く、マジで未知との遭遇感があったのが少し虚しい。でも、知れたからな。その一歩が大きいのだ。
ここまでストーリーにグッと来ているが、全体的に予算のかかった気合のあるSFでもあった。未来都市こそもろミニチュアだけどハイテクやセットが凄い。この時代にここまで表現出来るものか……と感心しつつ、ワクワクしたのはその出来よりも発想。デート回路!? これがバ○ク・トゥ・ザ・フューチャーより先なんでしょ。凄いなあ。未来衣装は最初は笑いそうになったけどジェシカのは何故か可愛く見えるんだ。私の好きなSFだった、ノーランありがとう。
2021-03-03