ヒース・レジャー版ジョーカーに魅せられてはや10年、あのキャラクターの誕生秘話が明かされる。個人的にむちゃくちゃに思い入れのあるこのキャラクター、扱いはかなり大切にして欲しい面倒くさいオタク。ドキドキで公開日に鑑賞、その感想は「ジョーカーオリジンの一つとして文句なし……」日本版CMの宣伝文句は罠である。
まずジョーカー最大の特徴は"共感性の欠如"じゃないか。観客が「ああ、こんな酷いことがあって悪になったのか」ではいかん。多くのヒーロー、ヴィランのようにお誂え向きなはっきりとした転機があのジョーカーにあったなら萎えてしまうところだったけどそのあたり今作は非常に良かった。パンフ見たら監督も主演もその点に関してかなり真剣に考えており、ジョーカーの"理解不能"さを尊重してくれていた。なんて素敵、もう満足。
ひたすらに暗くて重くてでも単純なダークムービーでなく一人の男がジョーカーに変貌するまでをじっとりと、観客も嫌な緊張に巻き込む独特の不快感で貫くテイストは理想通りの一言。発砲する瞬間に明滅した顔がまさしくジョーカーで鳥肌が立ったのを覚えている。そのシーンからわけもなく不安と辛さで心臓が嫌にバクバクしっぱなしだった。もう一度発砲する例のシーン、何度観ても理由の分からない涙が出る。ジョーカーは純粋悪でもなければ利己的な犯罪趣味でもない、混沌から生まれ混沌を愛した人間である……。
大好きだけど鑑賞後2週間虚無に襲われた。『タクシードライバー』『キングオブコメディ』観賞後だとまた別方向から刺さるってね。
【おまけ】
https://www.dropbox.com/s/av7sbgugdka9emo/graphic_mega.pdf?dl=0
2019-10-04